東映アニメーション、売上高・各利益は減収減益 コロナ禍による興行収入の伸び悩みや店舗の営業自粛等が響く

2021年6月23日 09:07

2021年3月期決算説明会

高木勝裕氏(以下、高木):東映アニメーション株式会社、代表の高木でございます。はじめに、新型コロナウイルス感染症に罹患されたみなさま、影響を受けられているみなさまに心よりお見舞い申し上げます。感染拡大が未だ終息しない状況を受け、みなさまの健康・安全面を第一に考慮した結果、前回同様、Web形式での開催とします。何卒ご理解、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

それでは、決算説明を始めます。まず、専務取締役経営戦略担当の吉谷より、業績の概略についてご報告します。引き続き私から、中長期の成長に向けた取り組みについてご説明します。それではお願いします。

2021年3月期決算(連結)

吉谷敏氏:専務の吉谷です。よろしくお願いいたします。まず私から2021年3月期決算の概略と、2022年3月期決算の業績見通し予想についてお話しします。みなさまの資料で申しますと2ページから11ページになります。よろしくお願いいたします。

売上高は515億9,500万円、営業利益は155億300万円、経常利益は160億4,000万円、当期純利益は110億6,700万円と、前期比では減収減益となりました。

主な要因としては、キーノート2つ目のとおり、コロナ禍による興行収入の伸び悩み、商品販売店舗の営業自粛、イベント・催事の中止・延期です。また前期の2020年3月期の『ONE PIECE STAMPEDE』の映画公開とそのヒットによる反動も出ました。

2021年3月期は、前年の2020年3月期、前々年の2019年3月期と異なり、当社2大タイトルの『ワンピース』『ドラゴンボール』など、新作の映画公開がない、いわばビジネス的には難易度の高い年度でした。そうした中で、さらにコロナ禍により大きな打撃を受けました。

一方、キーノート3番目のとおり、海外事業は、サウジアラビア向け劇場作品の納品や、映画配信権やアプリゲーム化権の販売好調にけん引され、前期比では減収減益とはなったものの、歴代では3番目の売上と利益を確保できました。

後ほど確認いただければと思いますが、計数資料というのはございます。その3ページにある国内・海外別売上では、海外売上比率が初めて50パーセントを超え、58パーセントに達したことは特筆すべきことでもあります。

2021年3月期 セグメント別内訳(連結)

セグメント別の売上高と利益です。コロナ禍による興行収入の伸び悩みや商品販売店舗の営業自粛、イベント・催事の中止・延期、版権事業の反動減等に伴い、多くのセグメントで前期比で減収減益です。

そのような中で、海外映像事業が過去最高の売上を記録したこともあり、映像制作・販売事業のセグメント利益では、海外映像の収益性の高さもあって、増益を確保しました。

2021年3月期 セグメント別分析①(映像製作・販売)

映像制作・販売セグメントにおける各事業についてご説明します。劇場アニメでは、2019年8月に公開してヒットした『ONE PIECE STAMPEDE』の反動減に加え、コロナ禍の影響で興行収入が全般的に伸び悩み、大幅な減収となりました。

テレビアニメも、コロナ禍の影響で、テレビ作品の関連事業である催事・イベント向け映像制作や、ゲーム向け音声制作などが低調に終わったことなどを要因として減収となりました。

海外映像についてはすでにお話ししたとおり、サウジアラビア向け劇場作品の納品に加え、北米やアジアで好調だった映像配信権販売にけん引されて、過去最高の売上高となりました。コンテンツ及びその他ビジネスについては、記載のとおりです。

2021年3月期 セグメント別分析②(版権・商品・その他)

国内版権については記載のとおり、『ドラゴンボール』シリーズのアプリ・ゲーム化権販売の勢いが一段落したことや、『ONE PIECE STAMPEDE』関連販売の反動減などにより、大幅な減収となりました。

一方、海外版権については、いわゆる巣ごもり需要の恩恵もあり、欧米での『ドラゴンボール』シリーズや、中国、香港、台湾をはじめとするアジアでの『スラムダンク』などのゲーム化権の販売が好調に推移し増収となりました。

商品販売事業、及びその他事業であるイベント・催事については、記載のとおり、今回のコロナ禍の影響を大きく被り、大幅な減収となりました。

2021年3月期 決算総括

2021年3月期、決算の総括になります。売上欄の記載内容については、すでにご説明した事柄や記載済みの内容です。売上総利益率が44.5パーセントと前期に比べ改善しています。収益性の高い海外事業のシェアが増えたことによるものです。

販管費の微増については、組織変更に起因して、一部の人件費を売上原価から販管費に振り替えたことに加えて、コロナ禍の中、テレワーク環境整備のため、ソフトライセンス料などの支払い手数料が増加しました。

一方、広告宣伝費や旅費・交通費などは、コロナ禍の影響もあり、大幅に減少しました。また営業外損益では、イベント会場や商品販売店舗の一部撤退、閉鎖等による費用が発生しました。加えて、特別損益でも、関係会社株式の減損が発生しましたが、いずれも一過性の費用となっており、次期以降に影響するものではありません。

主要作品の国内版権事業の状況

当社の主力作品である『ワンピース』と『ドラゴンボール』を中心に、国内版権の売上高の推移を四半期ごとにグラフ化したものです。内容はキーノートのとおりです。

ゲーム関係の販売推移について1つ付け加えます。まず左下の『ドラゴンボール』のゲーム化権の青線のグラフですが、ご覧のとおり、2021年3月期は前期並みの好調さには至りませんでしたが、各種キャンペーンの効果もあり、底堅く推移しました。

次に、右下の『ワンピース』のゲーム化権の青線グラフですが、こちらも各種キャンペーン効果もあり、2021年3月期は若干ながら増収となりました。いずれにしても、当社にとって売上高シェアの大変大きいビジネスだけに、今後の動向を注視したいと思っています。

海外映像事業の状況

内容はキーノートのとおりで、すでに説明済みの内容のため割愛します。

海外版権事業の状況

全世界的なコロナ禍の中でも、海外では巣ごもり需要の恩恵を受け、欧米では『ドラゴンボール』、アジアでは『スラムダンク』が売上を大きく伸ばしました。その他の内容はヘッドラインに記載のとおりです。

2022年3月期 業績予想(連結)

2022年3月期の業績予想です。売上高は510億円、営業利益は110億円、経常利益は113億円、当期純利益は76億円と予想しています。記載のとおり、国内外のアプリゲーム化権の販売では、これまでの勢いの鈍化や巣ごもり需要の剥落も想定し、約1パーセントの微減収の見込みです。

売上構成の変化により、収益率の低下に加え、海外オリジナル作品を含む新規コンテンツにおいては、その開発や育成に取り組みます。また、既存コンテンツにあっては、任期の維持と再活性化に前向きに取り組むことから、広告宣伝費やその他、関連費用が増加する見込みです。

2022年3月期は、今期にあたる2021年3月期と同様に、ある程度結果が読め、さらにプラスアルファが期待できる『ワンピース』や『ドラゴンボール』の映画公開がないことから、短期的なサプライズはなかなか見込みにくいと考えています。

当社の基礎体力、言い方を変えるなら、当社の現状の自力はどれほどなのかが試される年でもあると考えています。しかしながら、そうした中でも、次の2022年3月期からの一段の業績成長に向けて、そのための土おこしや、種まき、水やりは手を緩めず、これまで以上に注力する予定です。

なお、新型コロナウイルスの流行は終息に向かうとの予想ではありますが、なお予断を許さない状況にあり、不確実性は残っています。逆に、鈍化を予想しているアプリ・ゲーム化権の販売の勢いも、意外と想定よりも底堅く推移する可能性もゼロではありません。

いずれにしても、当社の業績見通しに変化が出た際には速やかにご報告します。また、業績予想については、未だコロナ禍の終息時期も見越せないことから、前期と同じく通期のみの開示とします。

2022年3月期 セグメント別予想

先ほど概略を説明したとおりのため割愛します。

以上が私からの説明になります。引き続き社長の高木より、足元の状況と、それを踏まえての当社の方向性、中長期の持続的成長に向けた取り組みや今後の作品展開スケジュールなどについてご説明します。ありがとうございました。

中長期の成長に向けた取り組み(作品展開)

高木:これより先は、私から中長期に向けた取り組みについてご説明します。まず今後、具体的にどのようなIP展開をしていくのか、そして強いIPを生み出すための基盤強化についてご説明します。IP展開は、引き続き新作への挑戦によるIPの創出と既存コンテンツの活用によるIPの育成の2軸で行います。

現在、公表されている2022年3月期の新作は『ジャーニー』と『おしりたんてい スフーレ島のひみつ/深海のサバイバル!』の2作品を合わせた東映まんがまつりです。『ジャーニー』は、中東地域で6月17日、日本では6月25日の公開を予定しています。これはサウジアラビアとの合作映画で、映像は昨年すでに納品しており、前期の海外映像の売上を大きく押し上げました。

海外市場向けの作品制作や国外プロダクションとの合作という、当社の今後の成長に必要な新しいチャレンジの第一歩です。『おしりたんてい』はすでにテレビ放映で人気のIPですが、子ども向けIPの収益化の幅をさらに広げるため、劇場版にも挑戦していきます。

『おしりたんてい スフーレ島のひみつ/深海のサバイバル』は、韓国発祥の学習まんがシリーズが原作で、こちらも当社の子ども向け作品の層をさらに厚くし、将来的な収益の拡大を図るのが大きな狙いです。

2022年3月期以降には、海外展開を見据えた新作IPも控えています。『アサティール』は『ジャーニー』同様、2年前にサウジアラビアと共同制作したテレビシリーズで、好調のため、セカンドシーズンの製作が決定しました。

『KAIJU DECODE』は円谷プロダクションとの共同作品で、日本のアニメーションの強みと新技術を活かしながら、海外でも幅広い世代への方々に受け入れられるハイクオリティの映像制作を目指しています。また、以前から紹介している『The Monkey Prince(仮)』も着実に企画は進行中です。

この3作品はまだ放映、公開時期が決まっていませんが、日本から輸出ではなく、最初から海外での展開を行う予定です。こうした海外向け企画が成功すれば、当社の成長に大きく貢献すると見込んでいます。

そして、新作だけでなく、既存コンテンツの活性化も引き続き積極的に行います。『デジモンアドベンチャー:』はこの4月から放映2年目に入りました。『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』は放映開始から半年が経ちますが、録画視聴ランキングは常に上位に入っており、子ども層にも認知が広がっています。

2021年配信開始予定のアプリ・ゲームも、募集開始から2週間で事前登録者数が30万人を突破するなど高い人気がうかがえます。1月から2ndシーズンを放映した『ワールドトリガー』は、質の高い映像が評判となり、10月からは3rdシーズンの放映も決定しています。

さらに、以前から新作が期待されていた『ドラゴンボール』は、先日、新作映画が2022年に公開と発表されました。また、放映、公開時期は未定ですが、『悪魔くん』『ゲゲゲの鬼太郎』の最新映画、また『スラムダンク』の映画化と、人気の作品が多数予定されています。

既存作品のリメイク、リブートを活発に行うことで、ファン層や収益を拡大し、そこで得た原資をもとに新作に投資するという流れをより活性化させ、さらなる挑戦を目指します。これらの開発、育成を適切に行い、収益の最大化を図るため、IPを軸とした組織への改変や事業地域展開の拡大、制作能力の進化等、基盤の整備にも引き続き注力していきます。

当社が中長期に目指す姿は、世界有数の映像制作事業会社です。2022年3月期予算も、アニメ制作スタジオとしての積極的な映像展開を推進する姿勢が表れた数字となっています。今後も積極的にIPの開発に挑戦し、より一層の成長を目指します。

中長期の成長に向けた取り組み(中長期ポートフォリオ)

当社はこれまで外部公表用の中長期計画を作っていませんでした。人気や流行に収支の大部分を左右される業界です。1年先の業績予想も難しく、まして中長期的な計画を公表できるほど精度の高いものに作り上げることは困難だと考えていたためです。

また、当社のIPはまんがや絵本を原作にしているものも多く、当社だけで勝手に今後の作品展開を決めることはできません。しかし、業績はここ数年好調を維持し、時価総額や外部のみなさまの期待、評価などを考慮すると、やはり当社の姿勢や方針をしっかりと見せるべきだと考えを新たにして、今回は、現在お話しできる限りの中長期のポートフォリオについて説明します。

ご覧のスライドのように、当社はIPを4象限に分けて考えています。横軸が作品の性質、縦軸がターゲットです。それぞれの象限でさまざまな作品を現在準備しています。守秘義務が厳しく設けられているため、作品名のほとんどを伏せることをご了承ください。

右上の第1象限が、世界向けオリジナルIPです。円の大きさが表すとおり、現在最も注力し、最も多くのIPを準備している分野です。さらなる成長のためには、海外市場の開拓が不可欠ですが、世界で戦うためには、柔軟に文化やエンタテインメントの差に対応できるオリジナル作品が必須であると考え、IP創出に注力しています。

世界水準の作品をゼロから作り上げるのは、時間もコストもかかるため、キャッシュが潤沢な今こそと考えています。海外でも受け入れられる作品を目指せば、もちろんコストもリスクも高くなります。複数の作品で若いクリエーターを積極的に起用したり、ゲームからスタートしたり、大型映画作品のみに頼り切らないバランスも考慮しています。

次に準備している作品数が多いのは、左上の、第2象限の世界向け原作IPです。魅力的なストーリーやキャラクターがすでに構築され、ファンが付いている原作を世界的に展開することで、大規模な収益化を狙います。新規IPの発掘だけでなく、ライブラリー作品の定期的な映像化や、続編、リブート展開により、大きなムーブメントを全世界で起こしたいと考えています。

左下の第3象限は、国内向け原作IPで、いわば当社がこれまで最も活発に展開してきた得意分野です。もちろん引き続き開発、展開には力を惜しみませんが、近年の制作費の高騰を考えれば、国内だけで回収し、利益をさらに拡大させることは難しい環境になりつつあると感じています。

国内が主なターゲットになる作品であっても、最終的には国内にとどまることなく、世界でヒットし、収益を上げられるIPとなるよう意識して構築していく方針です。預けていただいた作品をクオリティの高い映像にすることで、ライツホルダーとよりよい関係を築き、もっとたくさんの作品を任される会社へ成長できると思いますので、これまで力を入れてきたスタジオ強化も加速させていくつもりです。

最後が、右下の第4象限で、国内向けオリジナルIPです。当社の支えとして大きく寄与してきた分野ですが、やはり環境の変化を考慮すれば、国内のみの成長には限界があると思われます。最終的には世界を狙えるIPとして育てる必要があると思いますし、それが難しい作品であれば、国内のみでの回収方法を明確化することで制作の条件があると考えています。

この方針の根本にある姿勢は以前から変わりませんが、強いIPの広がりは無限大です。IPの開発と映像制作を強化し、制作会社としての立場を強められれば、競争の激化に打ち勝ち、市場の追い風を受け成長することができます。

展開スケジュール

直近の展開スケジュールの詳細に関して記載しています。これらの予定は、今後、新型コロナウイルスの影響で変更となる可能性もあります。

配当について

最後に、2022年3月期配当についてです。継続的、かつ安定的な配当の実施を基本方針とし、配当性向25パーセント程度とします。私どもからの説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

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