下水中のウイルス濃度から新型コロナ流行を早期予測可能に 東北大らの研究
2021年6月12日 16:00
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている現在では、感染拡大を早期に検知することが対策立案のために必要とされている。そこで注目されているのが、下水中の新型コロナウイルス遺伝子を検出することで早期検知を行う下水疫学である。
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東北大学と北海道大学の共同研究グループは、下水疫学に基づいた感染検知のための数理モデル構築に取り組んできが、10日、構築した数理モデルを用いることで、2020年の東京での感染流行を早期に検知可能であったことが分かったと発表した。
新型コロナウイルス感染症の下水疫学において着目されるのは、感染者が糞便として下水に排出したウイルスである。下水中のウイルス濃度が増加することを検出することで、感染流行を予測することができる。だが世界の多くの地域で採用されているウイルス検出法では感度が悪く、感染流行を早期に検知することが難しいとされてきた。
そこで共同研究グループが用いたのは、2021年に北海道大学が発表した高感度な新規検出方法である。この方法は、下水中の固形物の中からウイルスRNAを抽出して増幅し、定量PCR法で定量検出するものである。新規検出方法は従来の方法と比較して検出感度が100倍高いため、わずかなウイルス濃度の増加も検知することが可能となる。
東北大学は、2020年4月以降の東京都における感染者の実績データをもとに、下水中のウイルス濃度を数理モデルによって計算した。その結果、上記の検出方法であれば感染拡大の第1波は2020年4月11日に検出可能であると推定された。また第2波に関しても、2020年7月11日に検出が可能であったとの結果が得られた。
いずれも感染拡大の比較的早期に該当する時期であり、高感度な新規検出方法で初めて検知が可能であることが示された。
今回の研究は過去の感染流行の実績からウイルス濃度を推定したものであるが、逆に感染者数を推定することも可能になる。そのため、下水疫学的なアプローチにより、新型コロナウイルス感染症のより早期での流行把握が行われることが期待される。
今回の研究成果は、10日付の「Journal of Water Environment and Technology」誌オンライン版に掲載されている。