エルテス Research Memo(1):2021年2月期は損失計上も、DX化の加速に伴って新たな事業機会は拡大傾向
2021年6月9日 15:01
*15:01JST エルテス Research Memo(1):2021年2月期は損失計上も、DX化の加速に伴って新たな事業機会は拡大傾向
■要約
エルテス<3967>は、「次々と現れる新たなデジタルリスクに立ち向かい、デジタルリスクを解決すること」をミッションに掲げ、リスク検知に特化したビッグデータ解析技術を基に、企業を中心としたあらゆる組織が晒されるリスクを解決するためのソリューションを提供している。主力の「ソーシャルリスクサービス」は、SNSやブログ、検索サイトなどWeb上の様々なメディアに起因するリスクに対するソリューションを提供するものである。インターネットの普及やデジタルデバイスの進化により、利便性の向上と引き換えに様々なリスク(従業員による不適切投稿等に伴う風評被害やネット炎上等)が顕在化するなか、ソーシャルメディアの監視から緊急対応、その後の対応まで、顧客のリスクマネジメントをワンストップで支援する独自のポジショニングにより成長を実現してきた。最近では、社内のログデータを対象として情報漏えいなどを検知する「内部脅威検知サービス」も着実に伸びている。
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を契機とする新たな事業機会の出現やデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)化の動きが加速するなかで、創業来の主力である「デジタルリスク事業」に加え、「AIセキュリティ事業」及び「DX推進事業」を新たな事業セグメントとして立ち上げた。今後は3つの事業による変革を進め、デジタル技術を軸とするユニークな事業基盤を確立していく方針である。
1. 2021年2月期決算の概要
2021年2月期の連結業績は、売上高が前期比1.3%増の1,989百万円、営業損失が333百万円(前期は186百万円の利益)と増収ながら減益となり、各段階損益で損失を計上した。売上高は、(株)アサヒ安全業務社の連結効果(3ヶ月分の上乗せ)により「AIセキュリティ事業」が増収に寄与した。ただ、売上高全体が伸び悩んだのは、コロナ禍に伴う営業活動の低下により、主力の「デジタルリスク事業」が減収となったことが要因である。もっとも、顧客数・契約数は第3四半期から回復に向かい、期末時点では前期末比で増加に転じている。損益面では、新たな事業機会に対応するため、「AIセキュリティ事業」及び「DX推進事業」の新規事業セグメントを立ち上げ、マーケティング投資、人材採用の加速など、今後に向けた先行投資を積極的に実施したことから大幅な減益となり、営業損失を計上する結果となった。一方、活動面では、コロナ禍における新たな需要に対応するサービスの拡充やアライアンス強化、警備業界のDX化を支援するサービスの提供、自治体の「スマートシティ構想」の実現に向けた連携開始など、各方面で様々な成果を残すことができた。
2. 2022年2月期の業績見通し
2022年2月期の連結業績について同社は、売上高を前期比50.8%増の3,000百万円、営業利益を100百万円(前期は333百万円の損失)と大幅な増収により黒字転換を見込んでいる。「デジタルリスク事業」「AIセキュリティ事業」「DX推進事業」の3つの事業がすべて順調に伸びる見通しである。特に、アサヒ安全業務社の連結効果(9ヶ月分の上乗せ)により「AIセキュリティ事業」が大きく伸びるほか、「デジタルリスク事業」についても、「ソーシャルリスクサービス」の伸びと「内部脅威検知サービス」の成長継続により大幅な回復を見込む。また、「DX推進事業」については、自治体との連携などにより電子政府(以下、デジタルガバメント)関連が増収に寄与する見通しである。損益面では、引き続き研究開発費の増加を見込むものの、増収による収益の押し上げや費用の低減により大幅な増益を実現し、営業黒字転換を図る想定となっている。
3. 成長戦略
同社は、2021年4月13日付で中期経営計画を公表した。コロナ禍をきっかけにDX化への動きが加速するなかで、新たな事業機会を取り込むために、「AIセキュリティ事業」及び「DX推進事業」を創設し、事業構造の変革を進めていくことに狙いがある。これまで主戦場としてきたSNS炎上対策というニッチな成長領域に加え、「デジタルガバメント関連」や「警備業界」など、成長率が高い領域、もしくは市場規模が大きい領域へ展開し、ユニークな事業基盤を構築する方向性である。3年×3期による9年の中長期を視野に入れており、1期目の3年間は「変革と基盤構築」に取り組み、2期目以降での「加速度的な成長サイクルの実現」を目指している。
■Key Points
・2021年2月期はコロナ禍の影響や積極的な先行投資により、増収ながら大幅な減益となり損失を計上
・一方、コロナ禍を契機とした新たな事業機会の出現やDX化の加速など外部環境には明るい兆し
・2022年2月期は3つの事業の伸びにより大幅な増収を実現し、黒字転換を見込む
・3ヶ年の中期経営計画を公表。成長加速に向けて事業構造の変革と基盤構築に取り組む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)《YM》