5月の米雇用統計は予想下回る、テーパリングへの影響は?
2021年6月8日 17:29
●雇用統計予想に届かず
6月4日に発表された米国雇用統計は、市場予想を下回る結果となり、テーパリングへの観測が後退、1ドル110円を上回っていたドル円は109円台前半に下落し、週明けの株式市場も大きく下落した。
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非農業部門雇用者数が前月比55万9000人増で、市場予想の65万人に届かず、失業率も前月の6.1%から改善し5.9%だったが、予想の5.5%には届かなかった。
2日(日本時間3日)に発表されたADP雇用統計は予想を大きく上回る97.8万人となり、テーパリングが意識されてドル円も急上昇していたが、雇用が期待したより回復していないという捉え方となった。
●ADP雇用統計の意味
毎月最初の金曜日に米国労働省から発表される全米の雇用統計は、景気動向を知るために世界中が注目する重要な経済指標だが、その2日前の水曜日に発表される民間会社のADP雇用統計も重要視されている。
ADP雇用統計は、民間給与計算代行業者大手のADP社が、全米約50万社、約2400万人の顧客データをもとに作成している。
非農業部門雇用者数の民間部門との相関関係が高いとされているため、労働省の雇用統計の先行指標として値動きに影響する。
今回のようにADP雇用統計と労働省の雇用統計が大きく異なると、サプライズとして値動きが激しくなりやすい。
●テーパリングは遠のいたのか?
雇用統計の回復鈍化の原因として、給付金による勤労意欲の低下が指摘されている。
州からの失業保険と連邦政府からの給付を二重取りできることで、最低賃金を上回っているという現象が、失業率の回復を阻害していると言われおり、これは2021年9月まで続く。
一方で、5月の雇用統計では賃金の上昇は予想を上回っており、さらなるインフレを招く懸念がある。
失業率とインフレの狭間で、テーパリングの判断が難しくなっている。
雇用統計の結果よりも、8月に行われる毎年恒例のジャクソンホールでのシンポジウムに、投資家の関心が移っているという指摘もある。
ここで、FRBがテーパリングに言及するかどうかが大きな注目の的となる。5月の雇用統計の結果により、テーパリングの議論が消えたわけではなさそうだ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)