銀行、貸倒引当金の積み増しは8割超 企業の資金繰りは限界に、不良債権化進む
2021年6月6日 17:55
コロナ禍で企業業績が悪化している業種は多い。しかし、2020年の企業倒産件数は景気後退局面の中でも前年比で減少している。これは政府による資金繰り支援政策による成果であるとされる。しかし、業種によっては需要回復の見通しも立たず、資金ショートで倒産には至らないものの過剰債務が増大しているという指摘も見られる。企業収益が長期にわたり回復しなければ、銀行融資を経由した資金繰り政策は銀行の不良債権を増大させる結果も生じかねない。そして、コロナ禍の1年が経過し、そのような傾向が銀行資料にも現れてきているようだ。
6月2日、東京商工リサーチが「国内107銀行『リスク管理債権状況』調査(2021年3月期単独決算)」を公表した。リスク管理債権とは経営再建等を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予など債務者側に有利な契約内容で融資された債権で、銀行法により金融再生法による危険債権等と合わせて開示されるもので、不良債権化のリスクが高いものだ。
レポートによれば、2021年3月期での「リスク管理債権」は前年比16.0%増の7兆6831億円と急増、2年連続で前年を上回っている。内訳は、「破綻先債権」が前年比17.3%増の3014億円、「延滞債権」が同12.9%増の5兆3800億円、「3カ月以上延滞債権」は0.5%増の560億円、「貸出条件緩和債権」が25.7%増の1兆9451億円と軒並み大幅な増加だ。コロナ禍の資金繰り支援で、金融機関は貸出を大幅に伸ばしたが、コロナ禍の長期化の中、貸出増に伴うリスク管理債権も大幅に膨らんでいる。
業態別では、大手行が前年比29.2%増の2兆5348億円、地方銀行は同10.6%増の4兆1172億円、第二地銀は同9.7%増の1兆310億円となっている。21年3月期の「貸出金」合計は、前年比3.3%増の573兆5631億円、調査開始の08年以降で最高を記録。「貸倒引当金」の合計は前年比24.6%増の3兆6450億円と急増、積み増しを実施した銀行は、大手行6行、地方銀行54行、第二地銀27行の合計87行で、107行の81.3%、8割超を占め、調査開始以降で最多を更新した。
積極的な資金支援が奏功し倒産件数は減少したが副作用で企業の過剰債務を生み出している。コロナ禍の長期化で企業の資金繰りは限界に近づいている。レポートは「銀行は『企業支援』と『回収リスク』の狭間に立たされており、今後は銀行の企業への支援姿勢とリスク対応が注目される」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)