時短協力金の支給遅延で切羽詰まる事業者と、基金を食い潰して後がない東京都!
2021年6月4日 17:48
新型コロナウイルス対策として発令されている緊急事態宣言の、ほころびが表面化して来た。直接的に最大の影響を受けているのが、酒類を提供する飲食店だろう。5月末の期限を迎えたと言うのに、宣言解除に反対する専門家の声に押されて6月20日まで延長されて、もはや限界だ。
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昔から商売で強いのは”日銭を稼ぐ商売”だと言われて来た。居酒屋や飲食店などはその筆頭格だ。店舗に什器備品の構えがあれば、食材をメニューに仕立て上げる。家賃の負担や人件費の支払いがあっても、日頃の常連客と日によって多少波のある一見客が利用してくれれば、資金繰りに問題は無かった。貯えを気にする必要も無かった。
火事というリスクには火災保険が掛けられていたし、経営者の生命保険の支払いを怠らなければ、問題は無い筈だった。
専門家が新型コロナウイルスの蔓延防止策として唱えることに、全て明確な根拠がある訳ではない。
初期のころは、パチンコ店が目の敵にされた。大方のパチンコ店が大人しく休業する中で、営業を続けるパチンコ屋に対して、罰則の意味合いで店名を公表したところ「まだやっている店がある」と、利用者が押し掛けるハプニングまで発生した。落ち着いて考えてみると、パチンコ店の喧騒の中で話し込むヒマ人はいないから、飛沫も飛ばない。結果、今に至るもパチンコ店でクラスターの発生は確認されていない。
それでも昨年1年間でパチンコ店の8400店で構成されていた組合のうち、600店が廃業した。例年の1.5倍になるそうだ。個々の事情はつまびらかでないが、一連のパチンコ店を巡るコロナ騒動で客足が戻っていないと伝えられているから、推して知るべしだろう。
緊急事態宣言の時短要請や酒類提供自粛要請をものともせずに、営業を続けている居酒屋等の酒類提供店に、客が殺到しているという話が伝わっている。そんな繁盛店の情報に複雑な思いで接していた要請協力店の中には、「もう休業はやめた」と方針転換した店が出始めたと伝えられている。
現在標的となっている酒類提供店と蔓延拡大の因果関係を説明した専門家はいない。「対策やってる感」を醸し出すための、血祭りに逢っていると思う酒類提供店の経営者を、納得させられるだけのエビデンスが無いのは致命傷だ。
昨年11月に始まった東京都や大阪府の飲食店に対する時短要請は、もう半年以上になる。店舗の規模に拘わらず同額の支給で、不公平感が否めなかった協力金の支払いすら遅れ始めたと言う。多少の貯えを頼りに頑張っていた協力店も売上が無く、協力金が支給されなければ干上がってしまうから、自己防衛策を探り始めたということだ。
時短や休業要請を行って協力金を支払うというシステムには、そもそも無理がある。東京都は財政基盤が安定していることで知られていた。その財力で貯えて来た、使途の制限を受けない財政調整基金の残高が、19年度末には9345億円あったものが今年度(21年度)末には21億円になるという見通しが公表された。
個人の家計に置き換えても詮無いが、例えば900万円あった筈の預金残高が、僅か2年間で2万円になったとしたら、胸の中に葛藤が渦巻いてとても平常心ではいられまい。
このままだと東京都の財政が破綻しかねないという危機感を覚えるが、実際には都民の税金を引き上げるから東京都が破綻することは無い。破綻するとしたら個々の都民の家計だ。自分が負担する気の無い知事はあっけらかんと危機的な財政見通しを口にして、選挙で選んだ都民が尻拭いをすることになる。
こんな状態が日本中に広がっている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)