ノジマとスルガ銀行、資本・業務提携はわずか1年で解消か
2021年5月28日 16:29
スルガ銀行はシェアハウスなどの投資用不動産に対する融資で、数多くの関係書類の改ざんや偽造事件が発覚した18年、金融庁の業務改善命令を受けると共に多額の預金流失を招き、銀行業務の存続が見通せない状況に追い込まれていた。
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そこに現れたホワイトナイトが、家電量販店のノジマだった。血みどろの価格競争を繰り広げる家電量販店と、お行儀の良さ(スルガ銀行が犯した不正は銀行とは思えない行儀悪さだったが)が信条の銀行との提携だから、従来型の提携関係に納まらない新しいタイプの提携を期待する見方と、異例な組み合わせの仲良し関係がいつまで続くかと危惧する見方があったのは止むを得ない。
それでも19年、渋る創業家からスルガ銀行の株式を買い取ったノジマは、従来所有していた分を含めて合計18.52%の議決権を有する筆頭株主となった。正式な資本・業務提携は1年後の20年5月に締結されたが、ノジマの前のめりの姿勢は19年に周知されていた。
その両社だが、日経新聞などの報道によると、経営再建の手法で対立が激しくなり、サジを投げたノジマが提携解消の協議開始を申し入れたという。保有するスルガ銀行株も売却すると伝えられた以上、関係修復の余地は既に消滅したということだ。
提携当時の目論見では、金融とIT(情報技術)融合させたフィンテックやリテールテック(小売り向け先端技術)などのテーマごとに会議を設けて、協業の具体化を目指すことになっていた。提携委員会のトップに両社の社長が就いていたため、妥協の余地がないことを双方の共通認識とすることに、時間は掛からなかった。
基本的には融通の利かない業種である上に2度と失敗を繰り返せない銀行と、弾力的な値引き裁量を得意とする家電量販店は、お互いを未知の言葉を操る異邦人と感じていたのだろう。双方の文化に対する相互理解がなければ、金融とITの融合どころの話ではないということだ。
ややこしい話から足を洗って、株式の売却で手元流動性を上積みできるノジマは兎も角、後ろ盾を失ったスルガ銀行にとっては、再建策の模索がリスタートする。ノジマがどんな形でスルガ銀行株を売却するかで、その後の選択肢を狭める可能性もある。
スルガ銀行の経営陣は自主再建に自信を持ち始めたようだが、地方銀行の経営状況が厳しいということは世間周知のことでもあり、コロナ禍で混乱する世情を背景に考えると、スルガ銀行の直面する試練が容易でないことは明白だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)