飲食店取引の食料品業界「先行きが見通せない」 廃業検討率は6.7%に高まる
2021年5月26日 09:11
新型コロナ感染症対策としての時短要請や休業要請で飲食業は大打撃を受けている。国が国民に自粛要請をしたのが昨年2月だから、すでに1年以上もの間、飲食店は顧客を喪失し業績は悪化し続けている。飲食業の業績悪化は単に飲食店の問題だけでなく飲食店と取引する流通業者やメーカーにも及ぶ。コロナ禍が長期化することで、この飲食業を震源地とした負の経済波及効果が徐々に広がりを見せているようだ。
5月21日、東京商工リサーチが「コロナ禍における食料品関連業のアンケート調査」の結果レポートを公表している。東京商工リサーチは2月から実施している「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」の中で飲食業を除いた食料品関連業(飲食料品の製造業・卸売業・小売業)を対象にその動向を分析している。
これによれば、今年4月時点でコロナの「影響が継続している」と回答した食料品関連業者の割合は660社中の558社、84.5%にものぼりほとんどの関連業者が影響を受けている。昨年から新型コロナの影響で中国などからの輸入の停滞、売上不振にあるホテルや飲食店からの受注減などで2割超の企業の活動に悪影響が及んできた。さらに「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」との回答は54.3%と半数を超え、多くの関連業者が「業況の先行き不透明感」に強い警戒感を示しており、コロナ禍収束への道筋が見えず企業活動への影響が深刻さを増しているようだ。
関連業者の中でも店舗に商品を直接卸す飲食料品小売業への影響は最も深刻だ。「すでに影響が出ている」と回答した飲食料品小売業者の割合は4月時点で80.4%にものぼる。2月時点では飲食料品製造業では18.9%、飲食料品卸売業は29.6%だったので、コロナ禍1年を経過し、関連業種への影響は加速度的に増加している。昨年一度落ち着いた減収企業の比率は、2回目の宣言が発令された1月に79.8%に急上昇、3月でも54.8%と半数を超えている。
新型コロナ感染拡大から1年が経過したが、感染拡大は一進一退を続け、関連業種へも広がりを見せ、社会、企業活動への影響は深刻さを増している。食料品関連業の約半数の49.7%が事業の再構築について「行っている」または「行う予定がある」と回答しており、現況のままでは生き残れないと認識しているようだ。廃業検討の可能性について「ある」と回答した食料品関連業の割合は20年8月には5.7%だったが、21年4月は6.7%に上昇している。コロナ禍の長期化の中で資金繰り支援策のみでは難しい時期に来ているようだ。(編集担当:久保田雄城)