ブラックホール画像から理論を検証 世界初 物理理論の統一に前進 EHT
2021年5月23日 07:39
アインシュタインの一般相対性理論はブラックホールの概念を初めて提唱したが、物理学者にとっては悩みの種であり続けている。例えばブラックホールの内部では一般相対性理論の考え方は破綻をきたすと考えられており、それに代わる新たな理論の構築も進められている。2019年に、楕円銀河M87にあるブラックホールの画像を初めて発表した国際研究チーム、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)は21日、一般相対性理論やその他の理論との一致性を検証したと発表した。
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一般相対性理論でブラックホールを表現した場合の破綻に対処するには、いわゆる量子力学的な理論が有効であるとされている。つまり、一般相対性理論と量子力学とを統一することが望まれており、物理学における最重要課題の1つであると認識されてきた。
量子力学をベースとした重力理論には、例えば超ひも理論などがある。しかし、それらの理論で表現したブラックホールの大きさや時空の歪みは、一般相対性理論の場合と異なることが知られている。そこで、実際にブラックホールを観測することでそれらの理論を検証することが求められてきた。
EHTの研究グループは、2019年に観測したブラックホールについて、異なる重力理論が適合するかどうかを世界で初めて検証した。検証の際には、ブラックホールのシャドウの大きさが理論の計算値の範囲内かどうかに注目。その結果、観測データは一般相対性理論とは見事に一致しており、超ひも理論に基づく重力理論ともある程度の一致が見られた。つまり、一般相対性理論以外の重力理論でブラックホールを表現できる可能性があることが示されたのだ。
一般相対性理論と量子力学とを統一するための重力理論を検証するためには、実測データとの比較が必要不可欠である。今回の研究成果はそれを行うための重要な第1歩であり、確からしい理論を絞り込むことに繋がると期待される。
今回の研究成果は20日付の「Physical Review D」誌のオンライン版に掲載されている。