世界で初めて家庭用天ぷら粉を発売した昭和産業の、ミニ小史と現状・今後
2021年4月16日 07:30
家庭用天ぷら粉で首位、天ぷら揚げ用油でトップクラスの昭和産業は、2021年に創業実質100年目を迎える。故伊藤英夫氏が1922年(大正11年)に興した肥料の製販会社:伊藤英夫商店(翌年、日本加里工業に社名変更)が源流。
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肥料の製販事業は前20年3月期でみても、昭和産業の総売上高比率20.7%を占めている。伊藤氏はその後2社を創業。そのうちの1社が、小麦粉・食用油の製販を手掛ける昭和製粉(1935年、昭和10年)だった。そして翌36年に3社を統合し、昭和産業を設立している。
昭和産業の沿革史を振り返ると伊藤氏は自らを社員に「たいしょう、おやかたで俺なんか十分だ」と呼ばせる、豪放磊落な人物だったらしい。その代わり新人に対しては製品の梱包に至るまで自らやって見せて教える御仁だった。
が、昭和産業も必ずしも順風満帆な日々を送ってきたわけではない。1940年に率先して昭和産業を作り上げてきた伊藤氏が54歳という若さで急逝すると、株価は暴落、経営の危機に瀕した。加えて太平洋戦争の戦時下統制・火災・終戦時の混乱の中で、揺れ続けた。
そんな昭和産業を立ちなおさせる契機は、54年の神武景気。国民生活の多様化が原動力となった。そして歴史を重ねてきた企業にしばしば指摘される「中興の祖」が登場している。56年に4代目社長に就任した松本浩三氏。現三井住友銀行の取締役、みずほ銀行監査役を歴任した人物である。金融(機関)に精通した松本氏は、機を逃さず大型設備投資を断行し今日の昭和産業の盤石な礎を築いた。
さて足元の収益動向はどうか。前20年3月期の4.3%営業増益(19年3月期の28.8%増益という急伸後の反動)に対し今3月期は、「13.7%の営業減益(76億円)」計画。コロナ禍を勘案したものだ。内食用の天ぷら粉・油の伸びも、外食用の落ち込みをカバーしきれないと見込んだ結果だ。
だが開示済みの第3四半期時点の営業利益は69億9700万円と、計画比で既に92%に達している。ちなみに最終利益40%増益(90億円)計画は、ボーソー油脂買収に伴うのれん代特益(34億円)が寄与したもの。
最新号の四季報は業績欄の見出しを【回復】とし、来期を「業務用製粉・油脂食品上向く」として営業利益を86億円(今期計画比13%増)と独自予想している。それを裏付けるようにIFIS目標平均株価は本校作成時の時価3200円台前半に対し、3840円。
なお今後の昭和産業を見据える上で、M&A戦略に目配りをしておきたい。記したボーソー油脂に加え「糖質分野(前期の総売上高比率13.6%)」で医療向けも手掛けるサンエイ糖化も買収している。(記事:千葉明・記事一覧を見る)