「推論」に関わる脳の部位を特定 マウスによる実験で 北大
2021年4月15日 17:42
北海道大学は12日、「推論」に関わるセロトニン神経核をマウスの実験によって特定したと発表した。特定したのは、脳に複数あるセロトニン神経核のなかでも背側縫線核と呼ばれるもの。これまでも、推論にセロトニンが関与していることは間接的には示されていたが、直接的な証拠が得られたのは今回が初めてとなる。
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なお、神経核とは、神経細胞が集った塊で、神経回路の分岐点や中継点としての役割を持っている。
研究チームによれば、今回の研究成果は、AIの学習過程への応用や精神疾患の治療への応用などが期待できるという。
■マウスの推論とは?
研究グループはまず、マウスに(1)光る穴に鼻を入れると餌が貰えること、を学習させた。そして別の日に、(2)同じ餌について、それを食べた後に薬剤を与え、その餌を食べると気分が悪くなること、を学習させた。
さらにその後、研究グループは再び光る穴の前にマウスを置いた。すると、マウスが光る穴に鼻を入れる回数が減ったという。
つまりマウスは、直接経験していないにも関わらず、(1)と(2)の経験から「推論」することで、「光る穴に鼻を入れると餌が貰えるが、その餌を食べると気分が悪くなる」ことを学習したというわけだ。
■光遺伝学的な手法により推論に関わるセロトニン神経核を特定
これまでも推論にはセロトニンが関わっていると考えられてきたが、間接的な証拠しかなく、直接的な証拠はなかった。
そこで研究グループは、光をon、offするだけで神経細胞の活動をコントロールできる、光遺伝学的な手法を用いて、上記のようにして学習させたマウスが推論していると考えられるときに、マウスのセロトニン細胞核の活動を抑制した。
すると、脳に複数あるセロトニン神経核のなかでも、背側縫線核と呼ばれるセロトニン神経核の活動を抑制した場合にのみ、マウスが推論しなくなることが判明。
研究グループによれば、これまで同列的に考えられてきたセロトニン神経核について、それぞれが異なる役割を持っていることが解ったことは、今後、精神疾患の治療に応用していくことが期待できるという。
また今回の研究成果は、脳科学に基づいたAIの学習過程にも応用していくことが期待できるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)