スズキとダイハツ、軽自動車を本格的なハイブリットに転換できるか EV化は可能か?
2021年4月3日 08:40
20年12月、政府が50年のカーボンニュートラル実現へ向けて、「35年までに乗用車の新車販売を100%電動車とする」という目標を打ち出した背景には、電動化へ向けて加速化するEUや中国などの動きに乗り遅れまいとする切迫した想いだ。
【こちらも】スズキなどが開発する「マイルドハイブリッド」は「ハイブリッド」とどう違う?
技術的なことだけを考えると、EVの根幹であるバッテリーの姿はまだ明確でない。現在主流のリチウムイオン電池は、高価で重く、長時間の充電が必要でかさ張るなど根本的な課題を抱えている。全固体電池など、次世代を担うと期待されているバッテリーはあるものの、現状は低コスト・省スペース・短時間充電・高い安全性などの数多い目標へ向けて開発されている途上だ。
そこで日本のメーカーはハイブリッド(HV)や燃料電池車などの開発を進め、EV時代への橋渡しを目論んでいた。特にHV車の技術では欧米中のメーカーを引き離し独走とも言える状態に至ったが、余りに日本の技術が突出したために競合メーカーがHVでの勝負を回避して、一気にEVに向かう傾向が鮮明になって来た。
割高になるEVのウイークポイントを補助金で補って、「EV以外は販売できない」とゲームのルールを変更されれば、日本車の出る幕はなくなる。そこで政府も止むを得ず電動化に舵を切ったということだ。
だから日本が目指す「HVを含む電動車」という枠組みと、「HVを含むガソリン車を禁止」するという国々の思惑の乖離は大きい。
日本独自の規格と言える軽自動車のメーカーとして、スズキとダイハツの苦悩はココにある。現在軽自動車に搭載されているのは、マイルドハイブリッドという簡易型のHVで、シンプルなシステムであるため軽自動車の価格をあまり押し上げていない。反面、発進時にモーターがエンジンをアシストする程度の役割にすぎないので、燃費を改善する効果は低い。マイルドハイブリッドという、時流に乗っているようなシステムの名称だが、実効的なものではない。
本格的なストロングHVにしなければ燃費改善は期待できないが、高出力モーターと容量の大きいバッテリーを積み込んで価格を算出すると、ガソリン車比較で50万円近くコストが嵩む。そうなると軽自動車の売りである価格競争力が低下して、販売台数の落ち込みが避けられない。
中国では46万円というEVがバカ売れしていると言う。装備を極力外して、エアコンも付いていないようだから現実的な競合相手に想定する必要はないだろうが、日本で同等のクルマを同じような価格で製造することは出来ない。
現在の軽自動車のスペックを維持しながら一気にEVに切り替えると、販売価格が上昇する上に、車室空間がバッテリーに喰われて乗り心地を下げてしまう。
出光興産も年内には超小型のEVを100万円台で販売する予定だ。使用目的が絞られたクルマなので、現在の軽自動車市場を直接侵食することはなくても、自前のEVを開発する際には無視できない存在だ。
スズキとダイハツは、袋小路に追い込まれた心境だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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