加熱するSPAC上場の問題点とは
2021年3月26日 16:58
●SPACの上場が急増
ロイター通信などの報道によると、米国で、特別買収目的会社(SPAC)のIPO(新規株式公開)申請が、3月12日に過去最多の28件になったという。
【こちらも】暴落予兆するVIX指数 今後の動きは?
2020年はSPACのIPO調達額が過去最高の820億ドルを記録しており、2021年は3月中旬までで、すでに昨年の半分を上回っている。
著名投資家に限らず、政治家やスポーツ選手までもが出資しており、盛り上がりを見せている。
日本でも、SPACを利用した上場や資金調達も議論されており、ソフトバンクのビジョンファンドも設立を計画している。事業を行わない“空箱上場”とも言われるSPACに問題はないのだろうか?
●SPACとは?
SPACは名前の通り、買収を目的として設立された会社である。
流れとしては設立者が自己資本で立ち上げ、投資家から資金を集めて上場し企業を買収。買収された企業は上場会社となることができる。
買収される企業にとっては、通常のIPOにかかる厳しい審査と、審査にかかる時間を省略することができ、資金調達も容易にできるというメリットがある。
一般の投資家にとっても、未公開株を少額から投資できるというメリットがあり、緩和バブルが続く中、新たな投資先として注目されている。
●問題点は?
米証券取引員会(SEC)がSPAC上場に関し、金融機関へ任意での情報提供を求めたとの報道もあった。ロンドン証券取引所のCEOもSPACブームに警鐘を鳴らす発言をしている。
SPACは1980年代から存在しており、当時は設立者が資金を私的流用したり、自分が出資している会社を買収したりするなど、抜け穴が多く、不正が横行していた。
1990年代以降はその反省からルールを厳格化し、資金の9割を信託し、買収が進まない場合は投資家に返還するなど、投資家保護も進んでいる。
だが買収期間が24カ月以内と決められているため、買収先企業から足元を見られて買収価格を釣りあげられる危険もあり、また通常のIPOより審査が緩いために簿外粉飾を見抜けなかったり、経営状態を見誤る可能性がある。
今後、クラウドファンディングのように定着する将来性はあるが、玉石混交のため、それを見極める投資家としてのセンスが問われるだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)