楽天と日本郵政の資本提携から見る両社の思惑
2021年3月20日 07:40
●楽天と日本郵政が資本提携
楽天グループと日本郵政グループは12日、資本・業務提携で合意したことを発表した。
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12日の午後1時にNHKのニュースで報じられると楽天の株価は昨年来高値を更新、その後も堅調に推移し、一時2015年末以来の1500円台も記録した。楽天は昨年12月に、日本郵政傘下の日本郵便とも戦略的提携を結んでいたが、今回は資本強化したい狙いもあった。
●楽天グループと日本郵政グループ
楽天グループは、インターネットショッピングサイト楽天市場などのECサイトを運営する企業で、通信、金融、保険などの子会社を傘下に持つ。
一方、日本郵政の前身は日本郵政公社で、日本郵政株式会社法に基づく特殊会社であり、2007年10月1日に郵政民営・分社化された。2015年11月4日に、子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命と共に東証1部へ上場している。
三木谷浩史氏を中心としたオーナー企業である楽天と、旧公社である日本郵政とは全く歴史と性質が違う水と油のように見えるが、資本提携に至った思惑は物流やモバイル、DX(デジタル・トランスフォーメーション)での連携だけなのか?
●両社の思惑
楽天と日本郵政は昨年12月から物流面で、包括提携をしてきた。Amazonのような独自の物流網が無い楽天にとっては、日本郵政の山間部や農村部にも及ぶ物流網は魅力的である。
もう1つは、資金調達の面であろう。菅首相の携帯電話料金値下げ発言で、大手キャリア3社が続々と値下げに踏み切り、モバイル事業で楽天が優位性を失いつつあり、さらなる投資が必要になる。
第3者割当増資により、中国のテンセント、米小売りウォルマートなどと合わせて約2400億円を調達、日本郵政からは1500億円調達した。
日本郵政からしても、かんぽ生命などの不祥事でのイメージ悪化し、郵便事業が頭打ちになっていることなどからしても、反転攻勢のきっかけにしたい。
最大の注目は、全国の2万4000店舗ある郵便局の活用方法ではないか。高齢者の客層が圧倒的に多い郵便局で、楽天のスマホを販売するようになるかは疑問があるが、どのように変化していくか見ものである。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)