新型コロナを根絶できないとしたら、付き合い方を考えた方が良い時期だ!
2021年3月19日 07:42
新型コロナウイルスが世の中で認識されて、既に1年以上の年月が経過した。世界における感染者数は1億2000万人を突破し、死亡者は267万人を超えた。収束への道筋は未だに見えない。
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今までの人類の歴史で、感染症が多くの災いを導いてきたことは事実だが、逆に感染症に助けられて人類が今までの歴史を刻んできたのも事実だ。14年に刊行された『感染症の世界史』という著作の中で、記憶に残る警句は「ヒトと病原体との闘いは、未来永劫につづく宿命」というものだ。世の中に存在するものは、人間にとって都合がいいかどうかには関係なく、存在する理由がある。
毎年年末の時期に社会を賑わしていたのが、インフルエンザの予防接種をするかどうかという話題だ。インフルエンザも感染症の一種であり、毎年寒くなる時期に猛威を振るい始める。そこで現在までに得られた人類の知見を結集して作られたワクチンが、希望者に接種される。
流行が懸念されるインフルエンザの型に対応したワクチンが用意されるが、必ずしも想定通りの「型」が流行するとは限らない。結果として、空振りに終わってしまうことがあったとしても、社会が大きな問題としてこなかったのは、感染症に対応することの難しさを多くの人がそれなりに理解していたからだと言えよう。
今冬のインフルエンザに、例年の勢いはなかった。世の中のほとんどの人が、手洗いとうがいを励行し、マスク着用を徹底するという、衛生意識が高いと言われる日本でも想像できなかった生活習慣が根付いたためだ。おまけに3密を避けて、旅行も外食も控えるという、かつて考えられなかったような暮らしが、新型コロナウイルスのみならずインフルエンザにも有効に作用した。
日本で18年にインフルエンザが直接の原因と見られる死亡者数は、厚労省の人口動態統計によると3325人だった。これとは別に、インフルエンザに罹患したことによって、慢性疾患が悪化して死亡した人がいる。この両者を合算した超過死亡という概念では、毎年約1万人程度が死亡していると厚労省は発表している。
これに対して、新型コロナウイルスが認識されてから現在までの累計では、17日20時現在で死亡者数は8745人である。新型コロナウイルスに罹患して死亡した場合に、直接の死亡原因だったのかどうかを判別する余裕はないから、伝えられている死亡者数は超過死亡ということになる。
つまり、インフルエンザ関連で例年1万人程の死亡者が発生していたのに対して、新型コロナウイルスの関連死亡者は1年2カ月の間に9千人弱だということだから、単純比較では死亡者数は新型コロナウイルスの方が少ない。日本の新型コロナ対策は、充分に有効で成功した例だと言っても問題ではない筈だ。
但し、冒頭に記載した通り「絶滅させることが困難」である以上、今後も新しい波が発生する可能性は高いという認識は必要だ。感染が確認されてから1年ほどでワクチンが開発され、治療薬も徐々に絞られていると聞く。
新型コロナウイルスへの関心が高ければ、ヒト・モノ・カネを積極的に投入することで、対処方法がより具体的かつ正確になって行くことは間違いない。楽観過ぎるのは禁物だが、委縮し過ぎて孤立する生活は、社会にも心にも体にも相応しくないと認識することだ。そろそろ、ささやかな春の芽吹きを感じる瞬間があってもいいだろう。筆者は緊急事態宣言の解除は当然だと考える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)