米個人消費の回復、加速の見込み ワクチン接種で秋の集団免疫獲得に期待感
2021年3月18日 07:40
コロナ禍で世界的な経済停滞が持続している。当初の見込みではコロナ終結は2023年頃とされていたが、予想を上回るスピードでのワクチン開発が実現し、日本も含め既に世界各国でワクチン接種が行われており、経済に関しても明るい見通しが出てきている。
国家非常事態宣言が発出されて1年が経過するアメリカでは、1月初頭からの感染者数の減少やバイデン政権のワクチン接種加速による7月までの社会正常化目標などの表明によって、サービス消費を中心に景気回復への期待感が高まっているようだ。
3月11日、日本総合研究所が米国経済の現況と先行きを分析したレポート「米国経済展望:2021年3月」を公表している。これによれば、新型コロナの感染減少や活動規制の緩和を背景に2月の非農業部門の雇用者数が前月差37.9万人のプラスと増加ペースが加速しており、中でもレジャー関連が同35.5万人と全体の増加をけん引している模様だ。
1月の製造業生産は前月比1.0%プラスと好調で、自動車・部品が0.7%と小幅減少したものの航空需要の持ち直しを背景に航空機・その他輸送機器が2.2%プラスとなっている。製造業マインドを示す2月のISM製造業景況指数は60.8で3年ぶりの高水準となっている。また、1月の製造業設備稼働率は74.6%とコロナ前の水準までせまっている。
非製造業の同指数も55.3と良し悪しの判断の分かれ目となる50を超え、回答企業の多くが景気見通しについて楽観的な見方を示しているようだ。1月の実質個人消費は、前月比2.0%プラスと大幅に増加、背景に昨年末の現金給付による可処分所得の増加があると見られる。さらに1.9兆ドル規模の追加経済対策が可決され個人消費の増勢は加速する見込みだ。
バイデン政権はワクチン接種加速による早期の集団免疫獲得を表明しており、ワクチン接種が現在のペースで進めば今年10月には接種率70%を超え集団免疫獲得に至る計算になる。これにより感染リスクが低下することで低迷していたサービス消費は回復へ向かうと期待されている。NY連銀が公表している向こう1年先の家計支出の伸びの見通しは1月に4.2%と15年以来の高水準で、今のところ個人消費は堅調に推移する見込みだ。
しかし一方で、変異株の出現でワクチン効果への懸念もあり、医療関係者からは年内の集団免疫獲得は不可能という見通しも出ている。今後の米国でのワクチン効果と景況への影響の推移が注目される。(編集担当:久保田雄城)