進む副業人材活用 効果と今後の課題は
2021年3月12日 08:18
人材不足を補おうと、副業人材の活用が増えてきている。本記事では、活発化する副業人材活用の効果と、今後の課題について紹介する。
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■民間だけでなく行政でも副業人材活用が進む
2021年に入ってからも、副業人材の募集を開始する企業は増え続けている。2月には、カルビーとキリンビールが副業人材の募集を発表した。両社とも新規事業にあたり、専門的知見を持つ人材を外部から招く目的がある。
また、副業人材の活用は民間だけでなく、行政も積極的だ。2020年には、兵庫県神戸市、岡山県岡山市、奈良県生駒市が相次いで副業人材を公募している。いずれも、登庁には拘らず、テレワークでの副業を取り入れている点も目立っていた。
副業解禁による労働力の流動化、新型コロナによるテレワークの増加も、こうした動きに影響している。加えて、人口減少に伴い、将来的な人材のシェアは欠かせない。転職市場では、現在フリーの人材を企業が奪い合う構図になり、目的にかなった人材を得られないリスクもある。だが副業市場では、柔軟な雇用スタイルで求める人材にアクセスすることが容易なのだ。
■特に地方では今後の課題も浮き彫りに
副業人材の活用が増えている要因は、高度な専門的知見を持つ外部人材を、簡単な手続きで雇用できる点にある。近年は、副業者と企業を繋ぐマッチングサービスが増加し、両者の橋渡し役になっている。先程紹介した神戸市、岡山市、生駒市といった行政の事例でも、マッチングサービスとのタッグは注目点の1つだった。
外部人材はアウトソーシングとも言い換えられ、自社に不足している人材を外部から補強する手法である。DX化が急務だが、専門的人材が足りない場合でも、副業人材がそれを解決してくれるのだ。
しかし長期的視点に立つと、今後の課題も浮き彫りになってくる。副業人材の活用は確かに短期的な問題を解決してくれるが、将来的な苦手分野の克服を先送りしている面もあるのだ。そのため、副業人材の活用後に、得られた専門的知識やノウハウをどのように内部化するかが重要な鍵になるだろう。
副業人材の活用は、特に人材不足に直面する地方にとって心強い存在だ。しかし、それだけに副業人材への依存度が高まる危険性も高い。地方創生に繋げるためにも、地元の人材育成にどう還元していくかが大きな課題となるだろう。
そして、漠然と副業人材に希望を抱くのも危険だ。どの雇用でも同じく、募集する側に求める人材の姿が明確に見えていることが不可欠である。何を求められているかが分かれば、応募する副業者にとってもアクセスしやすくなるからだ。
副業人材の活用は、人材不足に悩む日本社会にとって大きな助けになりうる。だが、正しい方法でなければ、その恩恵を十分に受けられない可能性もあるのだ。今後は、副業人材の”活用法”により焦点が当てられていくのではないだろうか。(記事:西島武・記事一覧を見る)