テレワ増加で息切れするクリーニング業界
2021年2月11日 16:22
クリーニング業界が息切れしはじめた。帝国データバンクが10日に発表した実態調査によると、2019年度までは大手がけん引する格好で業界全体は右肩上がりだった。だが、新型コロナウイルスの感染予防のためテレワークが進み、クリーニング需要が減少。もともと厳しかった中小零細のみならず、大手や準大手も軒並み苦戦を強いられていることが分かった。
【こちらも】12月の外食市場規模、11カ月連続でマイナス 飲酒業態では前年比6割減 リクルート調査
帝国データバンクは、2015年度から2019年度決算まで5期連続で収入高が判明したクリーニング業者1833社を抽出し、分析を行った。2019年度の収入高合計は4245億4600万円で、4期連続で前年度比増加となっている。価格改定による値上げや、大手・準大手を中心とした店舗増加が背景にある。
しかし、2019年度の増収社数は198社で、2017年度の279社から減少している。横這いと減収の社数は増えており、伸び悩んでいる企業が多いことが浮き彫りになった。これに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスだ。
本格的に影響が表れたと見られる2020年6月、7月、8月、9月の決算企業で、2018年から2020年の収入高が比較可能な432社を見ると、収入高が悪化した企業が大幅に増加したことが分かった。
2019年6~9月期は、減収企業が75社(構成比17.4%)だったのに対し、2020年6~9月期は353社(同81.7%)を占めるという惨憺たる状況だ。外出自粛やテレワークで、ワイシャツやスーツをクリーニングに出す人が減ったためだ。
クリーニング業界は、クールビズの浸透や、洗剤・洗濯機の高機能化によってこれまでも大きな打撃を受けていた。クリーニングの需要減少に、新型コロナウイルスに伴う生活スタイルの変化が拍車をかけている。
中堅以上の業者は価格改定や、新規出店及び廃業したクリーニング業者からの店舗譲受けなどで面を取り、業績を維持していくと帝国データバンクは予想する。一方、小規模業者は値上げが難しくさらに経営者の高齢化が進んでいることから、廃業や倒産が増加する可能性があると言う。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る)