ベテルギウスの超新星爆発はまだ発生せず 東大らの研究
2021年2月9日 08:15
オリオン座に属する恒星「ベテルギウス」は2020年初めに大幅な減光が確認され、超新星爆発を起こすのではないかと考えられていた。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は4日、今回の減光は超新星爆発の兆候を示すものではなかったと発表した。
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■塵がベテルギウス減光の原因だった
2019年以降、ベテルギウスは2度の減光が確認されている。オーストラリア国立大学、Kavli IPMU、英国・ハートフォードシャー大学、米国・カリフォルニア工科大学の研究者らから構成される国際グループは、流体力学や地震のモデルを活用しベテルギウスの明るさの変化を調べた。
その結果、ベテルギウスは185日前後と約400日の2つの周期で明るくなったり暗くなったりする「脈動変光星」であることが判明した。ベテルギウスに起きた最初の減光は星から放出された塵やガスの雲が原因であり、2度目の減光はベテルギウスの脈動によるものだという。
研究グループはまた、ベテルギウスの現在の質量や大きさ、地球からの距離を明らかにした。ベテルギウスの現在の質量は太陽の16.5~19倍程度であり、推定値よりも小さい質量であることが判明した。半径は木星軌道から太陽までの距離よりも大きいと考えられていたが、太陽の半径の750倍ほどであり、推定値の約3分の2に過ぎないことも明らかになっている。
■地球に最も近い超新星爆発間近の星
ベテルギウスは太陽の約8倍の質量をもつ大質量星に分類される。恒星は水素を「燃料」に核融合することで燃え続け、水素がなくなるとヘリウムの核融合が開始する。ヘリウムから構成される中心核は収縮し、水素からなる外層は膨張することで、恒星は赤色巨星へと変貌する。核融合のための燃料がなくなると、大質量星の中心核による重力と外側へ膨張する力とのつり合いがとれなくなり、超新星爆発を起こすと考えられている。
研究グループは今回、ベテルギウスの中心核はヘリウムの燃焼段階であり、超新星爆発まで約10万年以上前であることを明らかにした。ベテルギウスは超新星爆発を起こす可能性のある星の中で最も近い距離にあるため、爆発前にどのようなことが起きるのかを明らかにすることが期待されている。
研究の詳細は、米天文物理学誌Astrophysical Journalに2020年10月13日付でオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)