公正取引委員会によるコンビニ包囲網作り、着々と進む
2021年2月5日 15:11
公正取引委員会(公取委)が1月29日にまとめた、コンビニなどのFC(フランチャイズ・チェーン)に対する指針の改定案は、加盟店が24時間営業の見直しを求める協議に応じなければ、”独占禁止法”に違反する恐れがある等の文言が盛り込まれた。禁忌事項を具体的に示すことで、加盟店に対して圧倒的な力を有するFC本部に対する、公取委の姿勢を明確にした。
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今までのいきさつを全てひっくるめて”執行猶予”にするようなものだから、「優越的な地位の乱用」は認めないとする姿勢を、鮮明にしたと言えるだろう。今後、加盟店が駆け込んできた場合に厳しい裁定が下される枠組みが、「案」として形になった。
19年2月、大阪府東大阪市のセブンイレブン(セブン)オーナーが時短営業を強行して、社会の注目を集めたコンビニの24時間営業問題は、その後も人手不足問題や値引き規制問題等々のコンビニに関わる様々な疑問が国民的な注目を集めた。
コンビニにまつわる問題は、地下に蠢くマグマのように時折小噴火を重ねてきたが、問題を提起する加盟店にFC本部が向き合ってこなかった。02年には公取委が「本部による仕入れの強制や値引き販売の制限」が独占禁止法に抵触するという指針を策定して、コンビニ本部を牽制していたが、個々の加盟店が本部の圧倒的な力に太刀打ちできずに、不利益を甘受する状態が継続する。公取委は中途半端な対応に終わったこの時の経験を、苦い思いで噛みしめているのではないだろうか。
19年に社会の注目を集めた問題は、公取委の矜持(きょうじ)を揺さぶったことだろう。コンビニ8社のFC本部と加盟店に対する実態調査を実施すると共に、約1万2千店の加盟店からアンケートへの回答も得た。20年9月には調査報告書をまとめ、FC本部に対して加盟店との取引状況を改善するための取組方針を、11月末までに策定するよう求めていた。
11月30日にコンビニ大手3社が加盟店との取引に関する改善方針を発表したものの、精々「説明を徹底する」程度のタテマエに終始した内容であり、その実効性に疑問符が付けられていたとしても止むを得まい。
社会がコロナ過にあるため、コンビニを取り巻く状況にも大きな変化が表れている。特に緊急事態宣言発令地域では、経営不振の飲食店から押し出された形の人材がコンビニ業界へ流入する傾向が見られ、コンビニの人手不足問題が改善しているという報道もあるが、疫病の蔓延に伴う一時的な事態であり、地域的な格差が大きいことも否めない。
問題はコロナ過でコンビニのビジネスモデル自体が大きく揺らいでいることだ。業界トップのセブンですら20年12月の既存店売上高は前年同月比1.8%の減少で、前年割れは3カ月連続となる。競合するファミマが5.2%減、ローソンが5.7%減、ミニストップが5.1%減と軒並み惨憺たる状況だ。
日本フランチャイズ協会の資料によると、コンビニ全体の売上は20年1月と2月の2カ月間のみが前年比プラスであり、3月以降12月までは10カ月間連続して前年実績を下回った。年間通算では4.5%の減少である。もちろん業種によってはもっと厳しい企業はいくらでもあるが、コンビニの厳しさが「内憂外患」から複合的に生み出されているところに、ひと際の深刻さがある。
加盟店の要望を受け入れながら、コロナ過を乗り越えて売上を回復軌道に乗せることが出来るのか。コンビニの真価が問われようとしている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)