2020年の小売業倒産件数、過去30年で最少に 新型コロナ影響 東京商工リサーチ調査
2021年1月30日 08:58
東京商工リサーチの調査によると、2020年における小売業の倒産件数が1991年以降で最も少なくなったことが分かった。
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■新型コロナの影響で倒産減少
29日、東京商工リサーチが2020年の「小売業の倒産動向」調査を発表した。負債1,000万円以上となる小売業の倒産件数は前年比14.3%減の1,054件となり、倒産件数は2年ぶりに減少するとともに1991年以降で最も少なくなった。また負債総額は同5.4%減の1,421億6,000万円となり、3年連続で減少した。
倒産件数を四半期ベースで振り返ると、消費税の増税により19年10-12月期は312件(前年同期比:12.6%増)、20年1-3月期も277件(同2.2%増)と増加していた。だが新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛により生まれた「巣ごもり消費」や、Goto政策の結果、4-6月期は259件(同9.4%減)、7-9月期は285件(同21.0%減)、10-12月期は233件(同25.3%減)と3四半期連続で減少となった。
■上場小売り企業の倒産はレナウンのみ
小売業のうち業種別で最も倒産件数が多かったのはその他小売業の326件(前年比:11.7%減)。ついで飲食料品小売業の244件(同22.8%減)、織物・衣服・身の回り品小売業の197件(同16.5%減)、機械器具小売業の187件(同8.3%減)、無店舗小売業の94件(同7.8%減)、各種商品小売業の6件(同2倍)。
件数の少ない各種商品小売業を除いて減少となっただけでなく、織物・衣服・身の回り品小売業、飲食料品小売業、機械器具小売業、その他の小売業では、1991年以降で最も倒産件数が少なくなっている。さらに上場会社の倒産はレナウンの1社のみだった。
また、負債額で最も多かったのは織物・衣服・身の回り品小売業の529億6,800万円(同6.1%増)。ついでその他小売業の316億1,400万円(同16.4%減)、飲食料品小売業の231億3,800万円(同26.4%減)、機械器具小売業の192億6,800万円(同6.0%増)、各種商品小売業の98億3,500万円(同約8倍)、無店舗小売業の53億3,700万円(同54.4%減)となり、業種によって増減が分かれている。
■不況型倒産の割合が増加
倒産に至った原因で圧倒的に多かったものは販売不振で854件(前年比:14.6%減)。ついで既往のシワ寄せが84件(同18.3%増)、他社倒産の余波の38件(同7.3%減)、放漫経営の33件(同40.0%減)、過小資本の15件(同31.8%減)、設備投資過大の7件(同40.0%増)、信用性低下の2件(同60.0%減)、その他の21件(同25.0%減)となっている。
このうち既往のシワ寄せと販売不振、売掛金等回収難(20年は0件)を合わせた不況型倒産の件数は938件(同12.5%減)で、小売業全体の倒産に占める割合は88.9%(同1.8ポイント増)となり30年間で最も高い割合になった。
■法的清算の割合が増加
倒産の形態別で最も多かったのは破産の939件(前年比:14.4%減)。ついで特別清算が51件(同21.4%増)、民事再生法が34件(同5.6%減)、取引停止処分など私的清算が30件(同14.3%減)。会社更生法は0件で18年以降3年連続で発生していない。民事再生法と破産、特別清算を合わせた法的清算は1,024件(同12.9%減)。全体に占める割合は97.1%となり、30年間で最も高い割合になっている。
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中で引き続き「イエナカ消費」「巣ごもり消費」の好調が予測されることから、「小売業が消費者をどう呼び込めるか注目される」としている。(記事:県田勢・記事一覧を見る)