小惑星「リュウグウ」が水を消失した原因、明らかに 米大学の研究
2021年1月12日 09:36
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する探査機「はやぶさ2」が探査した小惑星「リュウグウ」は、研究者が期待したよりも水の少ない天体であることが判明している。米ブラウン大学は5日、リモートセンシングにより、リュウグウから水が消失した原因を突き止めたと発表した。
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■リュウグウはいつ干上がったのか?
米航空宇宙局(NASA)リンカーン地球近傍小惑星探査(LINEAR)チームが、1999年に発見した小惑星がリュウグウだ。はやぶさ2が探査する小惑星としてリュウグウが選ばれた理由は、この天体が炭素質コンドライトから構成される「C型小惑星」であるためだ。われわれ人類を含めた生命の起源である有機物を、リュウグウが多く含むと当初期待された。
だが、リュウグウは研究者が予想したほど水を豊富に含まないことが判明した。リュウグウが水を失った理由として2つの説が存在するという。リュウグウは地球に火星ほどの大きさの天体が衝突する「ジャイアント・インパクト」によって誕生したと考えられている。ただし、リュウグウの母天体が干上がったのか、リュウグウ自身が干上がったかについては意見が分かれるという。
■近赤外線が明かした干上がった原因
ブラウン大学の研究グループは、はやぶさ2に搭載された近赤外スペクトル分光計(NIRS3)でリュウグウを観測し、リュウグウ表面と地下とで含水鉱物の組成を比較したという。その結果、両者がほとんど変わらないことが判明した。これは、リュウグウが誕生する以前に母天体が熱せられることで干上がってしまったことを意味するという。
研究グループが追求したいテーマの1つが、初期の太陽系における水の分布やどのような経路で水が地球に運ばれたかだ。地球へと持ち帰られたリュウグウのサンプルを実験室で解析中だが、研究グループが今回得た成果と比較することが期待される。
研究の詳細は、米天文学誌Nature Astronomyに4日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)