電動2輪車推進の展望

2021年1月5日 08:38

 東京都の小池百合子知事が、今度は「35年までに2輪車も全て電動化する」目標を強調したそうだ。

【こちらも】30年までに新車販売全て電動車 東京都のパフォーマンスか

 2020年12月10日付「30年までに新車販売全て電動車 東京都のパフォーマンスか」で述べたが、「東京都、30年全て電動車」、「新車販売 政府目標に先行」と、「国に5年も先んじて電動化」を推進するとした東京都の、パフォーマンス宣言に続く第2弾だ。

●ハーレーの電動バイク
 ハーレーダビッドソンが2021年春に「Harley-Davidson Live Wire」を発売する。(写真1参考)

 この先進的なバイクの、リチウムイオン電池は12.8V 24wh 120A、モーターは114Nm、最大出力は75kwだ。注目の最大航続距離は、市街地235km、高速道路152kmである。

 この数値通りだとしても、神戸・東灘の自宅から京都まで遊びに行くとすれば、京都駅まで片道で約70km。高速道路を大人しく走っても、洛北辺りを散策して戻るには無理があるかも知れない。

 万一ガス欠ならぬ「電欠」ストップすれば、車両重量は255kgもある。4輪車と違って、「牽引ロープ」で移動は不可能だ。

 公称航続距離は、概してベストコンディションで達成可能な数値だから、当然割り引いて考える必要があるだろう。そうすると、京都洛北ツアーは無理かも知れない。

 スペック表には、充電プラグタイプは普通:J1772、急速充電:CHAdeMOとある。

 充電時間は、普通充電なら0~80%充電するのに10時間、100%までには12.5時間かかる。DS急速充電では0~80%充電に40分、100%までには1時間とあるが、出先で急速充電の装置に辿り着いても40分の足止めとなる。

 そして急速充電を常用するのは、電池の内部温度が上昇して劣化し、電池の寿命を縮める。

 因みに価格は349万3,600円(消費税込み・諸費用別)である。

 アメリカで州を跨いでのツアーでは、1時間少々走っただけでその日の旅程はお終いとは行かないだろから、やはりメインにはガソリンエンジン搭載モデルを保有していて、電動の方は、市街地や近場を楽しむだけのバイクかも知れない。

 自動車メーカー定年後、ウイスコンシン州が本社の企業の日本法人に在籍したので、同郷のハーレーには親近感がある。

 幸い大型バイクの免許も保有しているが、個人的なハーレーダビッドソンに対するイメージは、あの広大なアメリカの大地には、アップハンドルで乗馬サドルの様なシートに跨って、大排気量のエンジン音を響かせて地平線を目指す姿が相応しいのだ。

●モーターと電気の関係
 ここで「モーターと電気の関係」を、改めて見てみよう。

 扇風機を家庭のコンセントに差し込んでスイッチONすると、電気がモーター軸に繋がった羽根を回して、風を送ってくれる。逆に、風でモーターと繋がった羽根を回せば、モーターは電気を起こす。

 これの大規模な設備が「風力発電機」である。もし風力発電設備に電気を流し込めば、巨大な扇風機になるのだ。

 電動バイクで坂道を登れば、車載電池の力でモーターが回って動力源となる。逆に、バイクが坂道を下ると、モーターが回されて電気が発生する。

●意外に難しい電動バイク
 4輪車であるEV車の回生ブレーキは、これを利用して消費した電気を補充電する。バイクと較べて、4輪車はスペース的にも余裕があるので車載電池容量も大きく、長い下り坂で回生=発電した電気を車載バッテリーへの補充電に活用できる。

 しかし、バイクに搭載可能なバッテリー容量はそんなに大きくできない。

 そこで、長い坂を下って、ガソリン車のエンジンブレーキの様に回生ブレーキを使用すると、回生ブレーキの発電量が多すぎて過充電となる。

 過充電が起これば、バッテリーに問題が発生するので、何等かの方法でこの電気を消費しなくてはならない。

 昔の研究段階では、ビーバーの尻尾みたいな装置に、回生ブレーキで過剰に発電された電気を通し、発熱エネルギーとして消費し、走行風で冷やしていた。

●やはり思い付きには限界がある
 電動バイクは、スペース的に余裕が無いのに、こんな厄介なシステムか、それに代わる何等かの方策も必要となる。コストにしても大幅に上昇するだろう。

 大型バイクで無ければ、現在の電動アシスト自転車のバッテリーよりは大掛かりになるだろうが、何とか自宅に持ち帰って充電できるかも知れない。だが、EV車同様の充電装置と保管場所の問題も厳然と存在する。

 勿論、ハーレーのバッテリーは、取り外して手持ちで自宅に運べるとも思えない。

 「35年までに2輪車も全て電動化する」とか、素人受けを狙った様な、安易なパフォーマンスは、勘弁して欲しいものだ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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