EV普及に貢献する産学連携講座を東大グループとデンソー、ロームらが開設
2021年1月4日 09:27
世界共通の課題である地球温暖化。その原因とされるCO2(二酸化炭素)問題は年々深刻度を増しつつある。その解決に向けた施策として、世界各国で今、ガソリン・ディーゼル車の販売を禁止しようという動きが活発化している。
この潮流は2016年頃に北欧から始まったのだが、2019年に世界最大の自動車市場である中国が規制を開始したことで、自動車メーカー各社がこぞって対応に乗り出した。それに伴って、ヨーロッパ各国の政府も方針を打ち出し、ドイツは2030年、イギリスは2035年、フランスは2040年の全面禁止を発表。日本政府も推し進める「2050年カーボンニュートラル」政策の一環として、 2030年前半のガソリン車販売禁止に向けての検討を開始したようだ。
そこで、俄然注目を集めているのが、ゼロエミッション・ヴィークル(排出ガスゼロの乗り物)といわれる電気自動車(EV)だ。しかし、EVが本格的に普及するためには、まだ解決できていない課題がいくつかある。EV普及の課題の一つは「航続距離」だ。例えば、日産自動車の新型リーフの場合、季節や走り方によっても変動はあるものの、満充電でおおよそ270キロメートル前後というところ。日常の街乗りなら問題ないが、充電ステーションも限られた現状では、長距離を走るときには少し心許ない。
その解決策として期待されている研究の1つに、走行中給電がある。そして中でも活発な動きを見せているのが、東京大学の研究グループ(以下、東大グループ)と、株式会社デンソーやローム株式会社、株式会社ブリヂストン、日本精工株式会社、東洋電機製造株式会社ら共同で研究開発している「走行中ワイヤレス給電インホイールモータ(IWM)」だ。
これは、タイヤホイールの中に給電性能を持つモーターを仕込み、道路からIWMに直接、走行中給電できるシステムで、究極的には、充電の心配や手間もが省けるというわけだ。東大グループは2017年に「第2世代ワイヤレス給電IWM」発表しており、2019年に発表した第3世代は、ロームが研究開発した超小型SiCパワーモジュールを採用することでIWMユニットの小型化に成功。第2世代と比べて走行中給電性能・モータ性能・車両への搭載性を大幅に改善し、より実用化に近づけている。
そして今年12月、東大グループはデンソー、ローム、ブリヂストン、日本精工の4社と共同で「SDGsを実現するモビリティ技術のオープンイノベーション」社会連携講座の設置を発表した。この社会連携講座では、走行中給電システムや車両運動制御、またそれらを組み合わせたシステムの研究を第一の研究テーマとしている。一方で、走行中給電を社会実装するためには広範にわたる研究が必要だとして、研究テーマにかぎらず研究開発への参加者を増やし、技術革新の基板を築こうと、オープンイノベーションとして成果の一部を開放 しながら研究を推進するという。
同講座は2024年3月までの時限設置だが、 第3世代走行中ワイヤレス給電IWMを発展させた新たな走行中給電システムの開発をはじめとする、新しいモビリティ技術開発を行い、2025年以降の実証実験フェーズへの移行を目指すというから、大いに期待したいところだ。(編集担当:今井慎太郎)