テスラ過大評価論
2021年1月2日 08:18
いつも触れるが、世界的にEV、EVと喧しいが、元はといえば、「内燃機関技術レベル」と自動車産業を支えて裾野を形成する「部品工業レベル」に劣る中国が、新しい土俵で勝負をすれば勝ち目があるだろうと期待して、強権発動しEV推進したのが原因だ。
【こちらも】EVシフトと中国市場への傾斜
その尻馬に乗ったのが、米国でディーゼルエンジンの排気ガス偽装事件を起こし、その技術レベルの馬脚を現したVWが代表するドイツ勢で、EVに雪崩れ込んだことが大きい。ドイツのスタンスが、想像以上に中国に近いのは、世界情勢から見ても気になるところだ。
●テスラにトヨタ以上の価値があるのか?
2020年7月2日、トヨタとテスラの時価総額が逆転した。
2019年に1074万台販売したトヨタと、僅か36万7500台しか販売していないテスラとの「時価総額が逆転した事象」の異常さが際立つ。
テスラは、「EVの時流」を上手く捉えたが、単なるモーターと車載電池を組み合わせただけの「電動車」でしか無く、「自動車メーカー」に分類すべきか否かも、迷うところだ。確かに、株式欄では「輸送用機器」に分類されるには違いないが・・
一方のトヨタは、軽自動車やファミリーカーから、超高級車に至るまでのラインアップを有し、頂点には天皇御料車まで提供可能な、総合自動車メーカーである。
通常のガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車からハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車(FCV)に至るまでの動力源の持ち駒があり、勿論EVもある。
そして、EVには決して担えない大型トラックの分野も、着々と「燃料電池大型商用トラック(FC大型商用トラック)」でカバーしようとしている。
こんな乗用車からトラックに至るまでの「総合自動車メーカー」であるトヨタの企業価値を、上回れる筈が無い。世界人類に対する貢献度合いにしても、テスラとは比べものにならない雲泥の差が厳然と存在する。
●戦う土俵が違うテスラ
複数台数が保有可能な富裕層が、興味半分で購入する車と、実用的な自家用車を購入するべく、検討を重ねた上で選ぶ車の違いがある。テスラのジャンルは宝飾時計であって、実用時計にはなり得ない。
高価な車であるから、着飾った煌びやかなパーティ会場に乗りつける程度には使えても、長距離の週末旅行には向かない。宝飾時計はパーティには似合うが、ビジネスの場では顰蹙を買うだけだ。
●販売方法
古い考えかも知れないが、ディーラーの営業担当者は、メーカー開発陣の「思い入れ」を理解し、共感して、購入を検討してくれる見込み客に対して、その車の長所・短所を含め、「選んで貰える」様に「商品説明」を行うものであると考える。
敢えて「選んで貰える」と書いたのには、筆者の個人的な拘りからである。
自動車メーカーに就職し、当時は、理科系卒業者は工場実習を経験した後、配属されたが、文科系卒業者は「販売研修」として全国のディーラーへ出向し、実際のセールス活動を経験させられた。
その際に、指導役の先輩から「土下座してでも買って貰って来い」といわれて、自分は信念を持って販売活動に取り組んでいたので、「買って貰うのでは無い、選んで貰うのだ」と大激論した経験がある。
自身が惚れて入社した会社の製品を、「お客様に納得して購入を決めて頂く」こと。その為に日夜努力しているのだ。極論すれば「布教活動」の様な感じだった。
●訪問販売から店頭販売に移行したが
COVID19の影響で、対人接触を極力避けようとする風潮から、通常の自動車販売店では商談機会が減少したであろうことは、想像に難く無い。
現在では「店頭販売」が一般的となっているが、昔は「訪問販売」が主な営業形態であった。住宅地図を全部塗りつぶす様に、各戸を戸別訪問した。
主な「決定権者」であるご主人は、昼間は勤めに出ているのが普通だ。それなのに奥さんしか在宅していない各戸を訪問するのは、いざ具体的な検討に入った際に、「家を揉ませてまで、自分の欲しい車に拘って、奥さんが好ましいと同意しない車種を購入できる」までの勇敢な主人は殆ど無いだからだ。殆どの家庭は、奥方様が主導権を握っている。
●テスラの販売方法
テスラはネット販売をメインに展開している由だが、古い人間からすれば、それは「家電」の購入方法であって、「自動車」の購入方法では無い。
「だから新しいのだ」という人もいるが、使い捨ての家電と、愛情を注ぐべきペットの違いだろうと思う。
ネット画像だけでペット購入を決めることは無くて、ペットショップに出向いて、どれ位懐いてくれるか、実際に触れ合って、お互いの相性を確かめる筈だ。
●テスラは「愛車」にはなれない
結局、テスラは、アイボの様な存在で、カタログスペックさえ把握すれば、実物を仔細に検討しないでネット購入等の手段で入手しても違和感が無い品物なのだ。アイボは、共に生活する中で「ペット」に成長してくれるが・・
「自動車」とは、愛情を注ぐ対象であり、家族の一員であるペットの様な存在で在るべきだと、昔人間の筆者は思っている。時価総額以外にも、テスラはいろんな意味で過大評価されているというのだ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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