太陽系内の衛星に眠る氷の正体を明らかに 岡山大の研究

2020年12月27日 20:58

 太陽系には、土星の衛星である「タイタン」や木星の衛星「エウロパ」、「ガニメデ」、準惑星の冥王星など、主成分が氷の天体が存在する。岡山大学は23日、こうした氷を主成分とする天体(氷天体)の水の状態を理論的に特定したと発表した。

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■氷衛星と生命の可能性

 エウロパやガニメデといった氷衛星の内部には、「地下海」と呼ばれる液体の水の海が存在すると予想される。また土星最大の衛星のタイタンは、太陽系にある地球以外の天体で唯一、地表に液体が存在することが確認された。

 欧州宇宙機関(ESA)が運用する小型探査機「ホイヘンス・プローブ」は、2004年にタイタンに投下され、大部分が窒素からなる大気からメタンの雨が降り、渓谷や湖沼といった地球に似た地形が作られていることが判明した。このため生物の存在が期待されるなど、氷衛星は科学者の関心を集めている。

■木星と土星では異なる氷衛星

 岡山大学の研究グループが焦点を絞ったのが、「ガスハイドレート」と呼ばれるガスが水和した氷上の固体物質だ。ガスハイドレートは地球の深海堆積物であるだけでなく、彗星の氷や火星の水の起源としても予想される。研究グループは、ガスと水がどのような割合だとガスハイドレートが生成されるのかを、理論的に予測する方法を考案した。

 この方法を太陽系上の氷天体に対して適用したところ、希薄な酸素大気が水に接触するエウロパやガニメデでは、通常の氷が存在することが予想されたという。他方、大気圧が高く温度の低いタイタンや極低温の冥王星では、ガスハイドレートのみが生成され、通常の氷が存在しないことが明らかになった。

■タイタンの大気にメタンを含む謎も解明

 タイタンの大気中に存在するメタンは、光化学反応で変化しやすい。数千万年でほかの物質に変化するため、タイタンの大気中のメタンがどのように地底から補給されるのかは、謎だった。今回、タイタンの地殻から大気までメタンが存在することが明らかになり、火山など水の噴火を経ずに直接メタンが地底から供給されることが判明したという。

 研究の詳細は、米天文学誌Planetary Science Journalに17日付でオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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