新型コロナに感染するとは、何を意味するのか? PCR検査の問題点は
2020年12月26日 12:34
新型コロナウイルスのPCR検査とは、唾液や鼻腔口腔内から採取したサンプル内の、新型コロナウイルスの遺伝子配列を備えたRNA(リボ核酸)を、検出するための検査だ。
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但しこの遺伝子の断片は、極めて少量なので採取した状態のままでは判別できない。そこで、サンプルを増幅させて検出しやすい状態にする。1回増幅(1サイクル)させると断片は2倍になる。このサイクル回数をCt値(threshold cycle)と呼ぶが、Ct値をいくらに設定するかという基準は、国際的にも日本にも存在しないようだ。
国立感染症研究所で定められているマニュアルには、Ct値が40以内で陽性となっていることから暫定的に40で運用されているが、30~35でもいいという意見もあって現在でも揺れている。
なお、現在「新型コロナ感染者」として報道されているのは、正しくは「新型コロナ感染症のPCR検査陽性者」である。PCR検査陽性者が増加することは感染者が増加していることを示唆するにしても、イコールではないことに留意する必要がある。
サイクルは倍々に増加させるのでCt値が30ということは5億3000万倍ということになり、Ct値が40とは5497億倍ということになる。ちなみに感染が抑えられているとして、国際的な評価が高い台湾のCt値は35なので、171憶倍だ。
問題はCt値を高くすると、通常では検出されないような微細な断片(専門家は”ウイルスの死骸”と表現する例が多い)を拾って、「陽性」と判定する可能性が高まるということだ。感染者と判定されながら無症状のままである人達の謎は、このCt値の設定にあるのかも知れない。
東京都内でのPCR陽性者と無症状者の実績を比較してみると、11月11日に317人の陽性者が報告され、内104人は無症状者だった。翌12日は陽性者が393人で無症状者が101人、13日は陽性者が374人に対して98人が無症状者だった。
この3日間の実績では、PCR陽性者の26~33%が無症状者だったことになる。どんな病気でも固有の症状が病名を決定する決め手の1つである筈なので、無症状なのにPCR検査陽性者に分類されながら、無症状のまま回復したと看做される人が多いということは、感染していない人をPCR検査陽性者に含めている懸念がある。
要は必要以上にCt値を上げているため、20~30%の誤差が発生しているのではないかという疑問である。仮にCt値を台湾と同じ35に設定した場合、日本のPCR検査陽性者数はどうなるのだろう。
世界各国で新型コロナウイルスの猛威が収まらない状況を考えると、WHOが早急に進めなければならないのは、最適なCt値を算出して各国の基準を統一することだ。そこで初めて各国の計数を一覧する妥当性が生まれ、感染の実相が見えて来る。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)