プラスチックゴミの大部分をリサイクル可能に 新触媒を開発 東北大ら
2020年12月17日 20:01
東北大学と大阪市立大学は15日、ポリオレフィン系プラスチックを低温条件下で高効率に有用化学品に変換できる、新しい触媒(酸化セリウム担持ルテニウム、Ru/CeO2)の開発に成功したと発表した。
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ポリオレフィン系プラスチックは、レジ袋やゴミ袋などさまざまなプラスチック製品に使われており、プラスチックゴミの大部分を占めている。そのため研究グループでは、本触媒を使った新しいプラスチックゴミのリサイクル技術を確立することで、現在社会問題化しているプラスチックゴミ問題の解決に大きく貢献できるのではないかと期待している。
■プラスチックゴミ問題
プラスチックゴミの排出量は年々増えている。その排出量は、経済協力開発機構(OECD) によれば、2015年時点ですでに世界全体で年間3億トンを超え、海洋汚染などさまざまな環境問題を引き起こしている。
しかし、現代の私達の生活においてプラスチック製品は欠くことができず、排出量を削減するにしても限界がある。そこでプラスチックゴミのリサイクル技術の確立が急務となる。
特に化学的なリサイクル技術は、プロセスの低炭素化などの観点から期待されている。
しかし、これまでのプラスチックゴミの化学的なリサイクル技術は、一般に400度以上の高温による処理が必要であることに加え、コストが高く、多量の副産物が生じるなどさまざまな問題を抱えていた。
■低温条件下で有用化学品に変換する新しい触媒を開発
そこで研究グループは、新しい触媒の開発に取り組み、酸化セリウム担持ルテニウム(Ru/CeO2)の開発に成功した。酸化セリウム担持ルテニウムとは、酸化セリウム(CeO2)にナノサイズのルテニウム(Ru)をまぶしたものだ。
研究グループによれば、新触媒は、200度の低温条件下、2MPaの低水素圧条件下でも活性を示し、他の金属担持触媒よりも高い活性を持つという。
また新触媒は、高効率にプラスチックゴミの大部分を占めるポリオレフィン系プラスチックを、潤滑油や液体化学品などの有用化学品に変換できるという。その収率は90%以上にもなることが確認されている。
研究グループによれば、このような触媒の開発に成功したのは世界でも初めてだという。今後は実用化に向けて、実際にプラスチックゴミを使った触媒プロセスの開発に取り組んでいきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)