旅行業者の倒産増加、負債総額は2000年以降で最多に 帝国データバンク調査
2020年12月14日 08:43
帝国データバンクが旅行業者の経営実態や倒産動向などを発表し、小規模な業者が大半を占める旅行業界において、倒産に至る業者も小規模業者が圧倒的に多いことが分かった。
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■減収企業の数が増加
11日、帝国データバンクが「旅行業者の経営実態・倒産動向調査」を発表した。これは同社の企業概要ファイル「COSMOS2」から、経営実態が判明している2,924社について、売上動向や地域別、業歴別などとともに、2000年1月から2020年11月までに発生した旅行業者の倒産746件について分析したもの。
2,924社中、直近3年度の売上高が判明している2,607社の2017年度から19年度の売上動向を振り返ると、増収企業の数は17年度:629社、18年度562社、19年度374社と減少、横ばいは同1,415社、1,520社、1,493社、減収は同563社、525社、740社となり、横ばいがやや増加し、減収企業が大きく増えていることが分かる。
■小規模な旅行業者が約8割
2,924社の内訳をみると、売上高では1億円未満が1,327社(全体の45.4%、以下同じ)、1億円以上10億円未満が1,253社(42.9%)、資本金別では個人を含めた1,000万円未満が953社(32.6%)、1,000万円以上1億円未満が1,875社(64.1%)、従業員数では10人未満が2,342社(80.1%)と小規模な事業者が多い。
また業歴別では10年未満が458社(15.7%)、10年以上30年未満が1,221社(41.8%)、30年以上50年未満が911社(31.2%)、50年以上100年未満が330社(11.3%)、100年以上が4社(0.1%)と業歴の浅い企業が多めだった。
■2020年は負債総額を更新確定
2000年以降に倒産した旅行業者746社を振り返ると、年度別で最も倒産件数が多かったのは2003年の50件。ついで08年と09年、11年が各49件、07年が46件、04年と13年が41件となっている。反対に最も少なかった年でも19年の20件。ついで00年と16年が26件、06年が28件、18年が29件となっている。また20年は11月時点で24件発生しており、2桁件数の倒産が続いている。
負債総額が最も大きかったのは、17年の213億2,500万円で、てるみくらぶ(負債約151億1,300万円)の倒産があったため。次は02年の148億6,500万円で、これは宮城野観光バス(同約108億円)による。ただし20年6月に民事再生法となったホワイト・ベアーファミリー(同約278億円)などにより、20年度の負債総額は既に302億8,500万円のため、2000年以降で最も多くなることが確定している。
■「下位グループから淘汰」の予測
倒産した746社を負債額で分けると、1,000万円以上5,000万円未満が384件(全体の51.5%、以下同じ)と最も多い。他は、5,000万円以上1億円未満が159件(21.3%)、1億円以上5億円未満が164件(22.0%)、5億円以上10億円未満が21件(2.8%)、10億円以上50億円未満が15件(2.0%)、100億円以上が3件(0.4%)となっている。
また資本金別で最も多いのは1,000万円以上5,000万円未満の476件(63.8%)。ついで100万円以上1,000万円未満が144社(19.3%)、5,000万円以上1億円未満が82件(11.0%)。従業員数でも10人未満が631社(84.6%)と圧倒的に多い。ついで10人以上50人未満が104社(13.9%)などとなっており、小規模な旅行業者の倒産が大半を占めている。
新型コロナウィルスの影響が長引くことで、旅行業者の2020年における決算はより厳しいものになると予測され、「業界の下位グループから淘汰が始まっているとみてよいだろう」と指摘している。ただし旅行に対するニーズがより多様化することで、小規模で業歴の浅い業者が柔軟に対応できる可能性もあるとしている。(記事:県田勢・記事一覧を見る)