史上初、新型コロナ治療薬実験をISSで実施 ESAの計画に国内企業も参加
2020年12月9日 08:23
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬候補の1つである抗ウイルス薬「レムデシビル」。欧州宇宙機関(ESA)は4日、国際宇宙ステーション(ISS)における微小重力環境でレムデシビルを用いた実験を実施すると発表した。
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■効果が不明なレムデシビル
エボラウイルスの治療薬であるレムデシビルは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対しても効果があると期待されてきた。レムデシビルを開発した米国企業ギリアド・サイエンシズは、新型コロナウイルス感染症の治療薬として同薬を日本に特例承認を申請し、即日承認された。ただし世界保健機関(WHO)は10月、レムデシビルについて新型コロナウイルス感染症に対する効果がないと発表するなど、治療効果については疑問の余地が残る。
レムデシビルは、静脈内の注入に適用できるように、添加剤シクロデキストリンによって製剤化されている。だがレムデシビルとシクロデキストリンによる複合体製剤の有効性については不明な点が残るため、ESAは微小重力環境下において、レムデシビルとシクロデキストリンがどのように相互作用するか、実験を実施する。
同実験は、ISS内欧州実験棟「コロンバス」に設置された国際商用実験サービス「ICE Cubes Facility」が利用される。また、日本企業の有人宇宙システム(JAMSS)もこのミッションに参加し、同社が開発した創薬支援サービス「Kirara」が活用されるという。
■微小重力環境が地上生物に恩恵をもたらす
ISSは高度400キロメートルという低軌道を周回し、微小重力環境が作られる。こうした微小重力環境では地上では不可能、あるいは短時間しか継続しない物質現象を確認できる。このため、地上に生息する生命のメカニズムを深く理解するためにも役立つという。
新型コロナウイルス感染症の実験がISSで実施されるのは、今回が初めてだ。ESAはこのほかにも、微生物による鉱物の分解(バイオマイニング)や、環形動物がDNAを修復する機能を調査する実験などを予定している。(記事:角野未智・記事一覧を見る)