リチウム空気電池の実用化に前進 寿命決定の重要要因を特性 NIMSら
2020年12月4日 08:12
リチウム空気電池は、理論上では重量当たりのエネルギー密度が圧倒的に大きく「究極の2次電池」として期待されている。しかし、サイクル寿命はリチウムイオン電池などと比較して非常に短く、その支配的な因子も明らかとなっていないことが課題となっていた。物質・材料研究機構(NIMS)は2日、ソフトバンクと共同で研究を行い、その因子を明らかにしたことを発表した。
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リチウム空気電池では純粋な充放電反応以外にも様々な副反応が発生するため、その全てを把握することは非常に難しい。そこでNIMSは様々な測定手法を組み合わせることによって、それらを定量的に評価する手法を開発した。
さらにNIMS-Softbank先端技術開発センターではその手法を用いて、より実用に近い設計のリチウム空気電池について分析を実施。
これまでラボスケールで作製されたリチウム空気電池は、セパレータや電解液の量が多すぎるため、理論上の重量エネルギー密度よりはるかに小さいエネルギー密度となっていた。だが今回、実用的なリチウム空気電池の分析を行ったところ、電解液量と面積当たりの容量が重要な因子であることが判明したという。
電解液量を一定のまま面積当たりの容量を減らすことでサイクル寿命が延びるというのが、今回得られた知見である。だが面積当たりの容量を減らすということは、エネルギー密度が減少するというデメリットも存在する。そのため、サイクル寿命とエネルギー密度とのバランスを見ながら電池設計を進める必要がある。
また、面積当たりの容量が増えることでサイクル寿命が落ちる原因は、リチウム空気電池内部の副反応増加にあることも明らかとなった。このことから、エネルギー密度を保ちつつサイクル寿命を延ばすためには、副反応が起こりにくい材料設計も必要となってくる。
本研究はリチウム空気電池のサイクル寿命に関わる重要な要因を明らかにしたという点で、重要な意義がある。この知見をふまえて、NIMSやソフトバンクをはじめとした研究機関がリチウム空気電池を早期実用化することが期待される。
本研究の成果は2日付の「RSC Advances」誌オンライン版にて掲載される予定となっている。