人間の採取が選択圧となり、目立ちにくい色に変わった植物
2020年11月23日 17:15
中国・横断山脈に自生するユリ科バイモ属のFritillaria delavayi(梭砂貝母)は人間の採取が選択圧となり、目立ちにくい色に変わっていったと考えられるそうだ(論文、エクセター大学のニュース記事、The Guardianの記事)。
バイモ属の植物は、鱗茎にアルカロイドを含むことから生薬として利用されるものも多い。日本薬局方ではアミガサユリ(Fritillaria verticillata)の鱗茎が「バイモ(貝母)」として収載されている。F. delavayiの鱗茎から作られる生薬「炉貝」は近年価格が上昇しており、採取圧が強まっているという。
中国科学院昆明植物研究所と英エクセター大学の研究チームが8地域で調査したところ、F. delavayiの葉の色は地域によって灰色~茶色~緑色と幅があり、採取が広く行われて採取圧が高い地域では背景となる現地の岩石の色に溶け込むような色になっていたそうだ。目立つ緑色の葉は採取圧の低い地域で見られ、土壌に大きな岩石が多いなど採取が困難な地域でも見られたとのこと。
草食動物に対する防御戦略として、数多くの植物が背景に溶け込むカモフラージュを行っていることは最近10年の間に確認されているが、調査を行った8地域に生息する草食動物は非常に少なく、アルカロイドを豊富に含むF. delavayiを草食動物が食べる可能性も低い。ただし、採取圧が選択圧となって色の変化を生んだことを確認するためには、草食動物の影響を確実に排除する必要がある。採取圧の低い環境による実験も長期的に価値のあるデータが得られる可能性があるとのことだ。