超大質量ブラックホールから吹く「風」 京大らが謎を解明
2020年11月22日 16:16
我々の住む天の川銀河を含め、銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在する。物質や光さえ吸い込むブラックホールから、ある種の「風」が吹いているという。京都大学は19日、ブラックホールの「風」のメカニズムを解明したと発表した。
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■謎の多いブラックホールの「風」
ブラックホールは、自身の強力な重力で周囲の塵やガスを吸い込む。その一方、ブラックホールから逃れる方向に吹き飛ぶガスの存在が確認されている。銀河の中心にある「活動銀河核」をX線で観測すると、「風」はスペクトルの中に吸収線として観測される。風が強いと、スペクトル内の吸収線が大きくずれるという。
ブラックホールから吹く「風」のメカニズムについては諸説ある。ブラックホールの周辺には、「降着円盤」と呼ばれるらせん状に吸い込まれていく塵やガスの構造が存在し、この降着円盤がブラックホールの「風」と関連することについては研究者間で一致が見られる。だが、ガスを加速させるのが降着円盤からの光なのか、それとも降着円盤の磁力なのかで意見が分かれていた。
■降着円盤が生み出す紫外線が原因
京都大学、呉工業高等専門学校(呉高専)、筑波大学、東京大学、英国・ダラム大学の研究者らから構成されるグループは、降着円盤の光がガスを加速させる説を採用。構築した理論モデルや人為的に観測値を作り出す「擬似観測」を使い、実際の観測値と比較した。その結果、降着円盤からの紫外線の力により、ブラックホールの「風」が再現された。研究グループによる今回の再現は世界初の試みだという。
2022年度にはX線分光撮像衛星XRISMが打ち上げ予定だ。XRISM衛星はブラックホールの「風」による吸収線を詳細に捉えられるという。これにより風の組成が明らかになるだろうと、研究グループは期待を寄せている。
研究の詳細は、英天文学誌「王立天文学会月報」にて19日にオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)