AIによりリアルタイムで材料特性を予測 迅速・高精度な開発に貢献 理研ら

2020年11月15日 08:10

 現代の科学技術発展において大きな位置を占めてきた材料開発は、時間とコストがかかることが最大のボトルネックとされてきた。そこで注目されているのが、人工知能(AI)を活用することによるプロセス革新である。理化学研究所とグローバルウェーハズ・ジャパンの共同研究グループは13日、AIを用いて材料の特性を予測する手法を開発したと発表。材料を作製しながらリアルタイムで予測を行うことが可能になったという。

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 共同研究グループが材料開発の対象として今回選んだのは、半導体材料であるシリコン単結晶である。従来、シリコン単結晶の作製プロセスには2日、さらに分析によって特性を評価するのに2日を要するというように、時間がかかることが課題であった。さらに、重要な特性の1つである酸素不純物濃度は、結晶中のわずかな箇所についてのみ測定可能である。そのため、細かな特性の制御が難しく、精度の高い材料開発を行う上でネックとなっていた。

 そこで今回の研究では、過去のシリコン単結晶の作製データと酸素不純物濃度の測定結果を、AIを用いて関係づけて予測するアプローチがとられた。ここで重要となるのが、どのパラメータに焦点をあてて予測を行うかという点である。酸素不純物濃度に影響を及ぼすパラメータは膨大に存在する上に、作製装置の環境など外的かつ動的なものも含まれる。それらのパラメータを適切に選択して、AIでのシミュレーションに反映させることで、高精度な予測が可能になった。

 さらに大きな成果として、得られた予測システムが高精度かつ1秒以内に実行可能なため、リアルタイム予測が実現したということが挙げられる。そのため、実験後の分析結果を待たずに特性値を得ることができ、材料開発スピードが大幅に向上することが期待される。また、作製中のデータ全てから予測値を得られるため、作製後のサンプルを分析するよりも細かな特性把握ができ、精度の高い制御も可能となった。

 シリコン単結晶に限らず、材料分野、ひいてはものづくりの分野ではより迅速で精度の高い特性制御が求められるようになる。今回の成果がその実現に大きく貢献することが期待される。

 今回の研究成果は、11日付の「Applied Physics Express」オンライン版にて掲載されている。

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