【どう見るこの相場】バイデン流の「分断より結束」でグロース&バリューの二刀流銘柄に勝利の方程式
2020年11月9日 09:11
混迷の米国の大統領選挙である。4年前とは大違いだ。4年前は、民主党のヒラリー・クリントン候補が、投票日翌日の11月9日に敗北宣言をして、共和党のドナルド・トランプ候補の大逆転勝利が早々と確定した。11月17日には、安倍晋三前首相が、主要国の首脳として一番乗りで当選の祝意を直接伝えにトランプ・タワーを訪ね、12月6日にはやはりソフトバンクグループ<9984>(東1)の孫正義社長が、トランプ・タワーを訪ねて米国の新興企業に500億ドルの投資を行うことを約束するなどのオマケもついた。
ところが今回は、投票日の11月3日から4日経ってようやく主要メディアがバイデン前副大統領の当選確実を伝え、バイデン次期大統領が勝利演説をした。激戦州での集計作業が慎重に進められ、また劣勢のトランプ大統領が、郵便投票に不正があるとして集計作業を差し止める訴訟を次々に提起して粘り腰をみせたからだ。さらにトランプ大統領は、バイデン候補の当選確実が報道されたあとも、敗北宣言をするどころか法廷闘争で徹底抗戦すると表明し、各地の支持者の強硬抗議も続けられている。バイデン陣営とトランプ陣営の分断はなお深まり、来年1月にバイデン大統領が誕生するかなお曲折が懸念されている。
株価の反応も大違いである。4年前は、投票日前から大統領選挙の不透明化を嫌い日米株価とも調整ムードだったが、11月9日にトランプ候補優勢が伝わった途端に、日経平均株価は、919円安と急続落して1万7000円台を割る「トランプ・ショック」に見舞われた。ただ為替相場が円安・ドル高に動いて事なきを得て、その後の「トランプ・ラリー」の舞台を整えた。
今回は、投票日前から株高であり、開票日の4日には集計結果が伝えられる度に上値を追い、日経平均株価は、前週末6日には4営業日連続の大幅高で1991年11月以来29年ぶりの高値に躍り出た。ただこの株高は日々、買われる銘柄が目まぐるしく変わり、一般投資家がやや振り回される展開となった。開票直後にトランプ大統領のフロリダ州勝利が確定するとナスダック株価指数が上昇してハイテク株が買われ、ついでバイデン優勢報道では大型経済政策期待で景気敏感株のバリュー株や環境関連株、さらに議会選挙の上院では、共和党が多数派となり「ねじれ」継続と伝わり、さらにFRB(米連邦準備制度理事会)により低金利環境を継続されると決定され、ハイテク株買いの揺り戻しが強まった。
週明けは、世界の主要市場で最も早くバイデン勝利を織り込む東京市場では、取り敢えずご祝儀相場でスタートしそうである。ただ買われる銘柄、売られる銘柄は、米国の議会選挙の結果も関わり悩ましいところで、なかでもハイテク関連のグロース株か景気敏感のバリュー株かは、優先順位が変わる「分断」の可能性がある。例えばバリュー株の場合は、神戸製鋼所<5406>(東1)が、今3月期業績を上方修正したとして11月6日に11%高し東証第1部の上昇率ランキングの第8位になり、出来高ランキングでも第7位と大賑わいとなったが、上方修正は赤字幅の縮小にとどまっており、さらに上値にチャレンジできるかどうかはなはだ心許ない。
そこで今週の当コラムでは、バイデン流の勝利の方程式の「分断より結束」の市場版で、ハイテク株セクターに足を掛けながらも、バリュー株要素も内包して「結束」を体現する銘柄に注目することとした。この「結束」のシンボル株は、同じく前週末6日にストップ高を演じ、年初来高値を更新した綜研化学<4972>(JQS)である。
同社も、液晶ディスプレイ関連の需要が、中国中心に回復し粘着剤販売などが想定を上回ったとして今3月期業績を上方修正し、今年6月に開示した減益予想が増益転換した。ストップ高してもPERは7倍台、PBRは0.6倍、配当利回りは3.1%とバリュー株要素が横溢している。確かに同社株は、新興市場の小柄株であることは紛れもないが、ここは小型株、大型株、主力株の別なくハイテク株とバリュー株の要素を「結束」させる二刀流銘柄をマークして勝利の方程式にチャレンジするのも妙味が大きそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)