携帯料金の値下げ問題が迷走を始めた 20ギガバイト新設が”値下げ”と言えるのか? (下)

2020年11月2日 07:55

 携帯電話料金の値下げは、スケールは小さいが日本に於ける積年の課題と言える。菅首相が誕生して政府の重点施策の1つに格上げされたからには、値下げの実現には総務省の存在理由が掛かっていると言っても過言でない。問題は3大キャリアが、非常にしたたかだということだ。

【前回は】携帯料金の値下げ問題が迷走を始めた 20ギガバイト新設が”値下げ”と言えるのか? (上)

 KDDIとソフトバンクはサブブランドを使って新しい容量(20ギガバイト)プランを発表した。KDDIはUQモバイルで3980円、ソフトバンクはワイモバイルで4480円だという。

 少々乱暴だが、2社の既往の大容量プランを50ギガバイトと見なして10ギガバイト当りの平均価格を算出すると、以下の式で1513円になる。⦅7650円(KDDI)+7480円(ソフトバンク)⦆÷2(社)÷5=1513円。大容量プランにおける10ギガバイト分の単価が1513円なので20ギガバイトに換算すると3026円になるから、両社が発表した3980円~4480円という価格に割安感はない。(UQモバイルはKDDI、ワイモバイルはソフトバンクの格安ブランド名)

 利用者にとって最も有難いのは、契約中のキャリアが現在利用中のプランの値下げに応じてくれることである。煩雑な手続きなしで値下げしてもらえることが、最も望ましい。サブブランドとはいってもそれぞれ独自の契約なので、利用者側が既存契約を解除して新契約を締結する必要がある。

 今回のプランには、「都落ち」のような気分を味わいながらアドレスの変更通知を送るなどの煩雑さを、喜んで進めるほどのインパクトはない。上記の計算式を参考にして、値下げを実感できる適正価格を算出するなら、3000円を切るのが妥当なところだ。

 気の廻る人たちは、既に独立系の格安スマホで3000円かそれ以下の料金を実現している。

 一連の流れを見ていると、3大キャリアのしたたかさに対して、値下げを求めて攻める側にひと際の迫力不足を感じる。

 総務大臣を含めた官邸側と、今まで継続して携帯電話事業に関わって来た総務官僚等の事務方に思惑のズレがあるのだろう。天下り云々の原則はあるにしても、現実問題として退官後の居場所を提供してくれる、貴重な有力事業者の力を削ぐようなことにあまり関わりたくないのではないか、という勘繰りすら浮かんでくる。

 キャリアがファミリー割引など、利用者を囲い込んで変更しにくいシステムを構築しているのに対して、総務省の対応は後手で単発だからなかなか本丸への切込みが出来ない。

 ここで想起すべきは、楽天モバイルの料金プランだ。現在はまだ基地局の設置を進めている段階で通信品質に不満は否めないが、料金プランはかけ放題の使い放題で2980円だ。5G対応端末を利用している場合はそのまま5Gを堪能できるという。日本全国に自前の基地局網が張り巡らされて、KDDIとのパートナー回線エリアを楽天の独自回線で運用できる時期が到来すると、断トツの割安感が現実のものになる。

 楽天モバイルが本格的に稼働する前に、割安な携帯電話料金を日本に実現することが出来るかどうかに、総務省の存在理由が問われていると言える。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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