リビアとイランが原油価格の鍵を握る
2020年10月26日 07:24
●リビア・イランが増産
ロイター通信の調査によると、OPEC(石油輸出国機構)の原油生産量が9月時点で3カ月連続増加していることが分かった。
OPECプラスの減産合意から除外されているリビアの生産施設の一部再開と、イランの輸出増が影響したと見られている。他の主要国は減産を維持している。
WTI原油先物は、9月8日には1バレル=36ドル近辺まで下落する場面もあった。減産合意で安定すると見られていた原油市場は再びボラティリティが大きくなるのか?
●石油大国のリビアとイラン
リビアは北アフリカの産油国で、2011年のカダフィ政権崩壊後も国家分裂・内乱状態が続いている。
9月にリビアの軍事組織リビア国民軍(LNA)のハフタル司令官が原油輸出の封鎖を解き、輸出再開を許可することを表明していた。
イランは、日本にも長年にわたって石油供給を続けてきた中東屈指の石油大国である。
しかし近年は、イランの核開発をめぐる経済制裁や、2019年末の米軍によるソレイマニ司令官の殺害などで緊張が高まっており、輸出にも影響を及ぼしている。
リビアの石油生産量は年間5,779万4千トン(2019年)で、世界で18位の生産量を誇る。イランは1億6,083万1千トン(2019年)で、7位のUAEに次ぐ8位となっている。
●予測不能なリビアとイランと原油価格
リビア政府は一枚岩ではない。ハフタル氏と国民合意政府(GNA)のマイティーク副首相は輸出再開で合意できたが、石油施設からLNAの傭兵は撤退しておらず、火種は完全に消えていない。
イランも米国大統領選挙の結果次第で、さらに厳しい制裁が科されるのか緩和されるのか大きく変わる。
民主党のバイデン氏が勝利した場合、イランからの原油供給量が増加する可能性もあり、そうなれば下落圧力が加わる。
経済再開に舵を切ると思われていたが、北米や欧州で新型コロナウイルスの感染が再拡大することによって、再封鎖や活動の制限が行われ、原油需要の回復は遅れて価格の下落につながる。
需要が思うように回復しない中、石油生産量18位のリビアと8位のイラン、2国の供給動向にも注意が必要だ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)