独禁法特例法により地銀再編は加速化するか? 地銀改革の表と裏

2020年10月20日 07:50

 独禁法特例法の適用が間近となり、地銀再編への関心がますます高まっている。

【こちらも】揺らぐゆうちょ銀の信頼性と地銀再編の加速化

 同一県内の地銀合併や統合を独禁法の適用除外とする特例だが、2030年までの時限立法であるため、今後10年間は再編の動きも加速化するのではないか。

 第4のメガバンク構想を掲げ、地銀再編に意欲的なSBIホールディングスの動向も気になる。帝国を築き上げたいSBIにとって地銀の改革は「おいしい材料」であり、幅広い商品やシステム供給によりさらに業績を伸ばすだろう。

 既にSBIは島根銀行や清水銀行など4行へ出資しており、今後は10社程度に拡充する予定もあるため、具体案が提示されれば株価急伸も予想される。反面、金融関係者からは「SBIの窓口を地方に作りたかっただけだろう」「竹中氏の思惑も見え隠れする」など懐疑的な見方もある。

 地銀再編の効果として地方活性化はもっとも期待されるところだが、現実には都市部に配置された各行のエースが高収益商品を扱い、地元はおざなりといった状態も多い。後継者問題に悩む地元企業には地銀仲介による後継者探しも有効だが、ビジネスマッチングやアライアンスの結果、本体が他県に流出してしまう可能性もある。

 ある地銀の中堅行員によると「再編後の人事が皆の感心どころ。同一県内の銀行同士はライバル意識も強くプライドもあるため、あえて県外銀行との合併を望むところもあるだろう」とのこと。さらに「地域の活性化は表向きの大義名分。銀行本来の使命は置き去りにされたところで議論が進む」と語る。

 「地銀の数が多すぎる」と指摘する菅首相の狙いは、改革によって地銀や地域経済に活力を取り戻させることにあるが、肝心の銀行側は後ろ向きの姿勢といえる。

 合理化に付きものの人員整理など課題も多いため慎重になるのは理解できるが、地銀全体で4年連続減益となった現状や11月施行の独禁法特例法など外堀は埋まっている。(記事:坂根豊志・記事一覧を見る

関連記事

最新記事