洗車傷を自己修復するスクラッチ塗装、良いことばかりではない 注意点は?
2020年10月20日 17:15
トヨタや日産、BMWなどの主に高級車に採用されるスクラッチ塗装と呼ばれる自己修復型塗装は、洗車キズやちょっとした引っ掻きキズなら簡単に消えてしまう。しかしこの塗装は、ボディコーティングや鈑金修理塗装でトラブルが後を絶たない。それは、特殊なクリア塗装が知識のない店舗で悪化させられることがあるほか、本来の状態に修復できていないからだ。
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自己修復型塗装は、日産ではスクラッチシールド、トヨタではセルフストアリングコートなどと呼ばれる。各メーカーでその呼び名は違うが、基本的に太陽などの熱により自己修復する原理は同じだ。
これは、トップコートのクリアに特殊な軟質樹脂を配合することで、熱により細かいキズが元に戻るという仕組みだ。スクラッチ塗装のクルマが近くにあれば試してみるとよいが、洗車キズなどがあればそこに蒸しタオルを押し付けるだけでキズが消えてしまう。
魔法の塗装のようで便利に感じるが、この塗装はコーティングの下地処理やキズを直す鈑金修理で思わぬトラブルになりかねない。
クルマを常にキレイにしたい場合、コーティングを依頼する人も多い。しかし、コーティングの施工業者は、塗装表面を研磨して下地処理を行いコーティングの施工をする。この下地処理での研磨がスクラッチ塗装の場合、時間とともに塗膜の膨張と収縮でぼやけた表面となってしまう。これは知識と技術がない施工店で起こる典型的なパターンである。
しかし、技術があるコーティング施工店であれば、スクラッチ塗装に対応した下地処理を行うため、対象のクルマを所有しておりコーティングを考えているなら問い合わせしてからのほうが良いだろう。
そして、もっとも問題なのが鈑金修理である。板金修理は普通の修理方法と全く変わらないのだが、この自己修復型塗料は非常に高価なことがネックになっている。保険でも嫌がられるほどであり、悪質な業者に依頼すると自己修復型ではなく通常のクリア塗装で修理されてしまう事も少なくない。
この自己修復型塗料は、以前は自動車メーカーから購入するしかなかったが、最近は塗料メーカーからも業者向けに販売されている。ただし、通常のクリア塗料に比べると数倍の値段となることから、これが仇となり自動車補修では修理費を巡りトラブルとなるという構図だ。
ちょっとしたキズだから修理費用はたいしたことがないだろうと簡単に考えていると、最近のクルマはとんでもない修理費用を請求される場合があることには、注意したい。(記事:小泉嘉史・記事一覧を見る)