都道府県ごとの遺伝子集団の差異を明らかに 渡来人の痕跡残す地方も 東大
2020年10月18日 17:11
東京大学は14日、47都道府県に住む日本人約1万1,000名のゲノムデータを解析し、都道府県レベルでの遺伝的な違いを明らかにしたと発表した。
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■ヤフーのゲノム解析サービスで判明
ヒトなど生物種では、個体のDNAの大部分が共通している。だがDNAの配列には個体差がある。こうした遺伝子の変異を解析することは多く行われており、とくにSNP解析と呼ばれる、DNAの塩基配列のうち1個の塩基だけが異なる「単塩基多型(SNP)」の解析は盛んだ。これにより、疾患に関連する遺伝子や個体間での薬物応答の違いなど、遺伝子レベルでの解明が可能になるという。
東京大学の研究グループがゲノムデータの分析に使用したのは、ヤフー(東京都千代田区)が9月30日まで提供していたゲノム解析サービス「HealthData Lab」の顧客約1万1,000名のデータだ。都道府県ごとの遺伝的集団構造を調べた。なお、ゲノムデータにはアイヌ人は含まれていなかったことも解析から判明している。
■渡来人の遺伝的痕跡を残す近畿・四国地方の人々
解析の結果、琉球人と本土人とは遺伝的に明確に分けられることが判明した。続いて、47都道府県をクラスターに分けると、沖縄地方、東北と北海道地方、近畿と四国地方、九州と中国地方の4グループに大別された。
さらに各都道府県での遺伝的特徴を調べたところ、沖縄県と各都道府県との遺伝的距離が示された。沖縄県と遺伝的に近いのは鹿児島県で、近畿地方と四国地方は遠かったという。逆に、近畿地方や四国地方の人々に渡来人の遺伝的な痕跡が多く残されていたことが判明した。
今回の調査では課題も残る。関東地方と中部地方の各県はどのクラスターにも分類されなかった。研究グループによると、地方のような集団で日本人の遺伝的な構造を論じることは適切でないことを示唆するという。
今回の成果は、各都道府県の縄文人と渡来人との混血の程度の違いが、地理的に反映したものだという。これにより、縄文人と渡来人とが混血する過程の理解が進展すると予想される。
研究の詳細は、日本人類遺伝学会の英文誌Journal of Human Geneticsに14日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)