太古の地球の大気、地球と月の磁場が結合して激しい太陽風から保護 NASA

2020年10月17日 16:07

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は15日、地球と月の磁場が結合することで、初期の激しい太陽風から、古代の地球の大気を保護したと考えられるとする研究成果を発表した。研究グループによれば、この地球と月の磁場が結合した磁場は、41億年前頃から35億年前頃まで存続し、地球の生命の誕生と発展にも重要な役割を果たしたと考えられるという。

【こちらも】数十億年もの間、月に刻まれた地球酸素の痕跡 ハワイ大学の研究

 なお、論文は14日付で「サイエンス・アドバンス」に掲載された。

■月の磁場

 現在、月には地球のような磁場はない。しかし、38億5000万年前頃から35億年前頃まで、月にも地球の磁場と変わらない強力な磁場があったことが解っている。

 岩石の中には、形成された当時の磁場の強さや方向の痕跡が残っているものがあり、アポロ計画によって月から持ち帰られた岩石を分析することによって解った。

 月は、地球に火星サイズの惑星が衝突し、そのとき飛び散った破片が集まって形成されたと考えられている。そのため、形成まもない月のコアは、高熱で溶けており、磁場を発生させていた。しかし、月は地球よりも小さかったために、そのコアは地球よりも早く冷えて固まり、15億年前頃には磁場を失ってしまった。

 ところで、磁場には太陽風から大気を保護する働きがある。

 例えば、かつては火星も温暖で川や湖、浅い海があったと考えられている。しかし火星は、磁場がなかったために、若い太陽の強烈な太陽風によって大気をはぎ取られてしまい、現在のような冷たく乾燥した不毛の惑星になってしまったといわれている。

 もし、若い太陽の強烈な太陽風によって、太古の地球の大気がはぎ取られてしまっていたら、現在、地球に生命は存在していなかったかもしれない。

■コンピューターモデルにより地球と月の磁場の関係をシミュレーション

 研究グループは、コンピューターモデルを使い、40億年前頃の地球の磁場と月の磁場の関係をシミュレーションした。すると、地球の極地と月の極地を結んで、地球と月の磁場が結合することが解った。

 研究グループによれば、この地球と月の磁場が結合した磁場は、41億年前頃から35億年前頃まで存続した可能性があり、若い太陽の強烈な太陽風から、古代の地球の大気を保護し、その結果として生命の誕生と発展にも重要な役割を果たしたと考えられるという。

 NASAでは現在、有人月面探査計画「アルテミス計画」を計画しており、サンプルリターンも予定されている。

 研究グループでは、地球と月の磁場が最も強く結びついていた月の南極地域からのサンプルリターンにより、今回の研究結果を検証できるのではないかと期待を膨らませている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

関連記事

最新記事