ダークマターの正体はアクシオンか 探査実験の謎現象を説明 東北大と東大
2020年10月16日 15:16
肉眼では見ることが出来ない仮想上の物質「ダークマター(暗黒物質)」。いくつか候補があるものの、未だその正体は掴めていない。東北大学と東京大学は13日、ダークマターはアクシオンであるとする新モデルを提唱した。6月に実施されたダークマター探索実験で正体が不明だった現象は、これにより説明できるという。
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■複数候補がある正体
ダークマターは宇宙に存在する物質の約5分の1を占め、通常の物質(バリオン)よりも5倍強存在する。地球から約3億2,000万光年彼方にある、かみのけ座銀河団内の銀河の運動を説明するために、ダークマターが提唱された。
ダークマターの正体についてはさまざまな説が提唱されている。英物理学者のスティーブン・ホーキング博士は、宇宙初期に誕生した原始ブラックホールが正体だと提唱した。弱い相互作用をする粒子WIMPsもまた、ダークマターの有力な候補だ。代表的なWIMPsはニュートラリーノだが、こうした未発見の素粒子の検出には至っていない。
アクシオンもまたダークマターの候補となる素粒子だが、ニュートラリーノと異なり強い相互作用をもつ。
■ダークマター探索実験で判明した謎現象
東京大学を含む米欧日を中心とした国際共同実験グループが進めていた暗黒物質直接探索実験が、XENON1Tだ。液体のキセノンから暗黒物質を直接検出する実験が2018年まで続けられた。実験結果を解析したところ、放射性物質に由来しないシグナルが確認されている。
東北大学、東京大学らの研究者らから構成されるグループは今回、アクシオンが電子に吸収されたことが原因である可能性を指摘した。アクシオンの質量が電子の質量の約200分の1と仮定すれば、謎だったシグナルを説明できるという。
■天文学の謎の現象をも説明可能
今回の成果は、従来の天文学で説明できなかった白色矮星や赤色巨星の冷却異常を説明可能にする。アクシオンなどの軽い未知の粒子が、これらの天体から放射されることで、エネルギーが奪われることが原因ではないかという。
今後は、ダークマターの探査実験や天体観測の精度の向上により、提案したモデルが検証されるだろうと、研究グループは期待を寄せている。
研究の詳細は、米科学誌Physical Review Lettersに12日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)