ノーベル物理学賞、英独米科学者3名が受賞 ブラックホールの発見に貢献
2020年10月10日 17:20
スウェーデン王立アカデミーは6日、英オックスフォード大学のロジャー・ペンローズ氏、独マックス・プランク研究所兼米カリフォルニア大学バークレー校のラインハルト・ラインハルト・ゲンツェル氏、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のアンドレア・ゲズ氏の3名が、2020年度のノーベル物理学賞を受賞したと発表した。
■一般相対性理論からブラックホールの存在を証明
ペンローズ氏の受賞理由は、ブラックホールの存在証明だ。独物理学者のアルベルト・アインシュタインは1910年代に一般相対性理論を提唱した。この理論は重力による光の進路の歪曲を主張する。アインシュタインが一般相対性理論を提唱した直後の1919年、英天文学者のアーサー・エディントンは、水星の近日点移動を一般相対性理論がうまく説明したことを観測で明らかにし、理論の検証が行われた。
ペンローズ氏は1965年、一般相対性理論からブラックホールの存在を数学的に証明した。ブラックホールは質量が大きいため光や物質を自らの重力で吸い込む。そのため可視光でブラックホールの存在を確認できない。アインシュタインはブラックホールの存在を信じなかったが、2019年にM87銀河の中心にある超大質量ブラックホールの撮像に成功するなど、その存在は現在では認められている。
■銀河中心の超大質量ブラックホールを発見
ゲンツェル氏とゲズ氏の受賞理由は、天の川銀河の中心から超大質量ブラックホールを発見したことだ。ブラックホールは通常、大質量星が超新星爆発後に重力崩壊で誕生する。こうしたブラックホールと異なり、超大質量ブラックホールの形成過程は現在も謎が残る。
両氏は1990年代初頭に、天の川銀河の中心にある天体「サジタリウスA*」に注目した。中心に近接する非常に明るい星の軌道の追跡が行われた。天の川銀河の中心部分を覆う塵やガスの奥に存在する天体の観測手法が開発されたという。
両氏は塵やガスの奥にある明るい星の軌道を説明する理由として、超大質量ブラックホールの存在を提唱した。それによると、太陽の約400万倍の質量を持つ天体が太陽系に相当する領域に凝縮されているという。
ノーベル物理学賞の賞金の半分はペンローズ氏に、残りはゲンツェル氏とゲズ氏に与えられる。(記事:角野未智・記事一覧を見る)