新型コロナ重症化、ネアンデルタール人の遺伝子が影響か 沖縄科技大などの研究
2020年10月5日 11:54
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しても無症状である人がいる一方で、重症化して入院する必要のある患者がいるなど、その症状には大きな開きがある。沖縄科学技術大学院大学(OIST)は9月30日、新型コロナウイルス感染の重症化と関連する遺伝子領域を、約6万年前のネアンデルタール人から引き継いでいることを発見したと発表した。
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■新型コロナと関連する遺伝子の変異
中国・武漢が起源とされる新型コロナウイルスにより重症化する原因として、年齢や持病のほかに遺伝的要因があることが明らかになってきている。タンパク質の合成など、遺伝子の情報は染色体内の塩基の配列に含まれている。その大部分は種内で共通しているが、DNAレベルでは変異によりバリエーションをもつことがある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するゲノム解析プロジェクトである「COVID-19ホストジェネティクスイニシアティブ」は、22本ある常染色体のうち3番染色体にある遺伝子のバリアント(変異)が、新型コロナウイルス感染症の重症化と関わっていることをすでに発見している。新型コロナウイルス感染症で入院した患者と入院しなかった患者の計3,000人以上を対象に調査した結果、重症化と関連する遺伝子領域の存在が明らかになったという。
■南欧で発見の古代人類から受け継いだ遺伝子のバリアント
OISTの研究グループは、ヨーロッパを中心に生息したネアンデルタール人と、アジアに分布していた古代人類のデニソワ人の遺伝子について、新型コロナウイルス感染症の重症化と関わりのある遺伝子領域との関係を調査した。その結果、南欧で発見されたネアンデルタール人がほぼ同じ遺伝子のバリアントをもっていることが判明。一方、シベリア南部で発見されたネアンデルタール人やデニソワ人は、この遺伝子のバリアントをもたなかったことも明らかになった。
研究グループによると、3番染色体内の遺伝子のバリアントをもつと、新型コロナウイルス感染症により人工呼吸器を必要とするリスクが最大で3倍になるという。
■遺伝子のバリアントを受け継がなかった東アジア人
研究グループはまた、新型コロナウイルス感染による重症化と関連する遺伝子のバリアントを受け継いだ人の数に、地域差があることも明らかにした。南アジアでは人口の約半数がこうした遺伝子のバリアントをもっていた一方で、東アジアでは保有者がほとんどいなかった。
研究グループによると、3番染色体内の遺伝子領域と新型コロナウイルス感染による重症化との関連は未解明だという。一刻も早い解明が必要だとしている。
研究の詳細は、英科学誌Natureに30日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)