東京での降雪に海面水温が影響 都立大がシミュレーションで発見
2020年10月3日 10:02
雪に慣れていない関東地方の平野部では、数センチメートル程度の積雪であっても社会的に大きな影響がもたらされることが多い。関東地方の降雪は主に南岸低気圧によって起こることが多いが、予想が難しいことが知られている。そこで東京都立大学の研究グループは1日、日本周辺の海面水温に着目し、シミュレーション実験を行ったと発表した。
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南岸低気圧に伴う雨や雪の予報は、低気圧の経路と雲域の広がり方の両方について正確に行われる必要がある。そのため、降雪に関わっている複数の要因を理解する必要があり、不明な点が多いとされてきた。日本の南を流れる黒潮の経路変化なども影響する要素であると言われてきたが、詳しい調査は意外なことにあまり行われてこなかった。特に海面水温の条件と関東地方の降雪の関係に関しては未解明であった。
そこで研究グループは、東京で積雪が観測される前の1週間の海面水温データを調査した。その結果、本州の南の黒潮海域と関東・東北地方の東の海域の海面水温が統計的に見て低いことが判明し、これらが降雪に影響する可能性があると判断した。
この2つの海域の海面温度を変えてシミュレーション実験を行ったところ、降雪に影響する海域がより明らかになった。関東・東北地方の東の海域の海面水温が下がると影響が大きい一方で、黒潮海域の海面水温の影響は小さい実験結果となった。この結果は、これまで黒潮が関東地方の降雪に影響が大きいという言説と、逆のものである。
今回のシミュレーションでは考慮しきれていない要素も多いため、実際には黒潮の経路変化も重要であると考えられる。今後の研究では、関東地方の降雪に影響する要素をさらに詳しく調べていく必要がある。関東地方の降雪は、東アジアでの冬季の異常天候を考えるうえで重要なモデルケースでもあるため、技術を駆使したさらなる調査が期待される。
今回の研究成果は日本気象学会発行の「Scientific Online Letters on the Atmosphere」誌のオンライン版に9月30日付で掲載されている。