メゾン ミハラヤスヒロ 2021年春夏コレクション - 歪み・揺らぎ・破れ──均整をおかす
2020年10月2日 21:25
メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)の2021年春夏コレクションが発表された。
■均整をおかす──
今季のテーマ“MORE OR LESS”とは、「多かれ少なかれ」「おおよそ」の謂いである。なるほど人は、外見も中身も完璧であることを喜ぶ。しかしそれは画一的な陳腐さに陥ることもありえよう。今季のメゾン ミハラヤスヒロは、緊張を湛えたこの均整を、歪ませ、揺らがせ、破ることで、不均衡がもつ魅力を徹底して表現した。
■歪んだシルエット
歪みが生みだすシルエットが印象的だ。ブルゾンやコートに見るように、袖とアームホールの位置をずらすことで、前のめりの独特のシルエットが生まれている。また、ゆったりとしたシルエットのデニムジャケットは、さらに布地の一部をつまむことでサイズを絞り、フォルムの歪みをいっそう際立たせた。通常、シャツなどにダーツを入れれば「すっきり洗練された」シルエットとなるだけに、遊び心の効いたコントラストが光っている。
■揺らぐ色彩
衣服を覆う色彩もまた、ぴんと張り詰めたような単色の均整を打ち破っている。ワークテイストのジャケットや波打つようなスカートには、特殊なスプレー吹き付けの技術により、あたかも染めを施したような着彩を施した。手作業ゆえに1点1点異なる、滲んで揺らめくような風合いに仕上げている。
■解体・再構築的なデザイン
特徴的な解体・再構築的なデザインも、より徹底的に推し進められている。ロングスリーブ同士やロング×ショートを前後で組み合わせたブルゾン、幾多のものスリーブで構築されたクルーネックニット、裏表を反転させたり、異なる素材のパーツを解体してはめ込んだパンツなど、表情豊かなドッキングが試みられている。
また、プリーツのスカートは斜め向きに組み合わせられ、不安定な雰囲気ながらも波打つような表情を引き立てる。ワークブルゾンでは、ぼろぼろにほつれたようなパーツを執拗に重ねる。パーツの1つひとつは見慣れたカジュアルウェアのものながらも、徹底した再構築により、均整を破った姿だからこそ現れる魅力を引き出した。