長周期彗星は軌道で2つのタイプに分類可能 国立天文台など
2020年10月2日 18:16
ハレー彗星のように約76年周期で太陽のそばに戻る彗星がある一方、何百万年もの長い周期をもつ長周期彗星が確認されている。国立天文台は9月29日、長周期彗星の軌道の向きが、2つの面に集中していることを発見したと発表した。
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■オールトの雲からやってくる長周期彗星
ハレー彗星のような短周期彗星は「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる、海王星の外側にある氷からなる天体がその起源であるのに対し、長周期彗星は太陽系を球殻状に取り巻く「オールトの雲」からやってくる。
長周期彗星はもともと、「黄道面」と呼ばれる惑星が公転する軌道面で誕生したと考えられている。これらの小天体が天の川銀河の重力によって太陽系の外にあるオールトの雲まで運ばれた。その後、天の川銀河の重力によって軌道の形が変わり、再び惑星のある領域まで戻ってくるのが長周期彗星として観測されるのだという。
■黄道面と反対向きの「空黄道面」にも長周期彗星の軌道が集中
国立天文台などの研究グループは、天体力学にもとづいて長周期彗星の軌道の形と向きを解析した。その結果、長周期彗星の軌道の向きが2つのタイプに分類されることを突き止めた。黄道面とは別に、「空黄道面」に長周期彗星の軌道の向きが集中していたのだという。黄道面と空黄道面はともに天の川銀河の円盤面に対し約60度傾いているが、その向きは反対だった。
研究グループによると、今回の発見は、天の川銀河の重力の効果がよく再現されているのだという。米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の彗星カタログもまた、長周期彗星の軌道の向きが黄道面と空黄道面とに分類されることを示している。
研究グループによると、長周期彗星がどこから向かってくるのかを予測できれば、そうした彗星を早い段階で発見できるだけでなく、彗星を構成する尾やコマが元来どういう状態だったかが理解可能になる。今後、南米・チリ北部に建設中の大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(LSST)により、空黄道面の長周期彗星の詳細が判明するだろうと研究グループは期待を寄せている。
研究の詳細は、米天文学誌Astronomical Journalに9月26日付でオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)