新型コロナがひきこもりを急増させる可能性 名大などの研究

2020年9月30日 14:24

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界規模で蔓延するなか、感染予防のために「密閉」「密集」「密接」という3つの密(3密)をできるだけ避けることが政府等によって推奨されている。職場はテレワークへの転換、学校など学習環境ではオンライン授業への移行が求められ、結果として自宅で多くの時間を過ごすよう生活スタイルが変化している。名古屋大学は25日、新型コロナウイルス感染症により「ひきこもり」が世界各地で増加する可能性があるとの研究結果を発表した。

【こちらも】社会的行動に関わる脳細胞を発見 神戸大など

■日本以外でも確認される「ひきこもり」

 6カ月以上にわたり就労や学業などへの参加を避け自宅に閉じこもる現象が「社会的ひきこもり(以下、ひきこもり)」と呼ばれる現象だ。日本では1990年代からひきこもりの存在が確認されている。2003年(平成15年)にその数は217万人とピークを迎え、2019年(令和元年)でも110万人のひきこもりが推定されている。ひきこもり状態の人の放置は、本人や家族の問題だけでなく生活保護費等の公的扶助の負担増にもつながる。

 ひきこもり現象は、日本だけでなくアジア諸国やフランスなどの欧州諸国でも確認されるなど、世界規模での問題になりつつある。

 一方、新型コロナウイルス感染症の防止策として、各国ではロックダウンなど厳罰つきの外出禁止政策が採られていた。共同研究に参加したグラスゴー大学のある英国では約3カ月のロックダウンが実施されたという。日本ではロックダウンほど強い政策は採用されていなかったが、緊急事態宣言による不要不急の外出自粛が約1カ月にわたり課された。

■オンライン治療が対策として有効か

 名古屋大学、グラスゴー大学の研究者らから構成されるグループは、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの解除後も社会への復帰を果たせず、ひきこもりへと至る可能性が高くなっていることを確認した。こうしたひきこもりへの移行は、幼少期の劣悪な環境といった個人レベルのリスク要因と重なって発生しているのだという。

 新型コロナウイルス感染症がもたらしたひきこもりは、インターネットやオンラインゲームを介してのみ世界との関わりを持ち続ける点でも、従来のひきこもりと大差ないと研究グループは主張している。

 今後増加の恐れがあるひきこもりやその家族の支援のために、各国が公的資源を投入する必要が出る可能性があるという。研究グループは、新型コロナウイルス感染症によるひきこもり予備軍の存在に注視し、オンライン治療などの措置が有効だろうと結論づけている。

 研究の詳細は、国際精神医学雑誌World Psychiatryに15日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

関連記事

最新記事