コンビニの経営に公取委が警鐘! 本部は独占禁止法の適用を回避できるのか? (1)
2020年9月26日 18:14
本部と加盟店が協力して売上の増加と利益の拡大を図るところに、フランチャイズの本質がある。売上を増加させてフランチャイズの存在感やシェアが高まれば、ステイタスが上った加盟店の利用が増えてますますフランチャイズの勢いが増す。売上が増えた加盟店は更なる事業意欲を掻き立てる。
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コンビニにこの図式は当てはまりそうもない。コンビニ本部の強圧的な方針に反旗を翻すオーナーは相当以前から存在した。おそらくコンビニの業態が世間の認知を受け始めた頃から、窮状を訴えるオーナーはいたのだろうが、右肩上がりで業績の伸張を続けるフランチャイズチェーンの勢いに、訴えの声はかき消されて来た。
風向きが明らかに変わったと感じさせたのは、19年2月に「24時間営業を断念します」とセブン‐イレブンのFC店(大阪府東大阪市)が声を上げた時だ。
当時世間の関心を集めていた「働き方改革」に真正面から逆行しているような、オーナーを取り巻く厳しい環境をマスコミが報道するようになって、コンビニ本部への逆風が強まった。
19年4月には世耕弘成経済産業相が、コンビニ本部のトップを集めて人手不足対策や加盟店の負担軽減を図るように行動計画策定を要請した。
同月下旬にはコンビニの大手3社が経産省に行動計画を提出。業界リーダーのセブン‐イレブン・ジャパンが「営業時間は最終的にFC店のオーナーに任せる」と述べるなど、表向きは改善を進める内容となっていたが、実質的には建前ばかりの飾り物と見抜かれたようだ。
そして20年9月1日には、「24時間営業の強制や値引き販売の制限は、独占禁止法に違反する恐れがある」という結論をしたためた報告書が、公正取引委員会からコンビニ幹部に渡された。11月に設定された期限は、待ったなしを意味する。
コンビニ加盟店は本部から売れ筋商品や魅力的な独自商品の供給を受け、本部指導のノウハウで売上向上に努力する。24時間営業は本部指導の最たるものだ。不夜城と呼ばれるような都市部のど真ん中で営業している加盟店であれば、コストを十分賄える売上があるかも知れない。
反対に、地方の小都市に所在する加盟店の場合は、深夜の時間帯に出歩く人すらまばらな状態で、ほとんど売上がないような店もある。
人件費を払っても余裕の加盟店と、深夜営業が経費の垂れ流しでしかない加盟店が共に存在している。問題は、人件費が加盟店の負担であることだ。加盟店が深夜営業をすることで本部の負担は特にない。商品配送が効率的になるという利点が強調されるくらいだ。
例えば1万店の加盟店が、深夜の時間帯に1店平均1万円を売上げたとする。フランチャイズ全体では1晩で1億円の売上になる。加盟店が時給1000円のパートを2人雇用して、深夜8時間の営業をしたと仮定すると、時給だけで1万6000円になる。当該商品の粗利が10%、本部との折半割合が五分五分と仮定すると、加盟店1店では1万6000円の人件費を払って500円の利益ということだ。1店舗当たり1万5500円の損失が発生するから、1万店分では1晩で1億5500万円の損失(本部は5000万円の利益)が加盟店に圧し掛かる。
うがったみかたをすると、加盟店から本部へ利益の付け替えが行われているような気にすらなる。この問題は、人手不足が進むことと毎年の最低賃金の見直しが避けられない現状では、今後ますます切迫する。人件費の負担方式を見直す手もあるだろうが、深夜営業に対する加盟店オーナーの意向を最大限尊重することが、最も分かり易い方法だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)