新型コロナ感染に関わる遺伝子、地域・民族間の差は無し 環境要因が影響か 北大ら
2020年9月23日 18:50
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威をふるう中、死亡率など新型コロナウイルスの感染状況が地域によって顕著に異なることが確認されている。北海道大学は18日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染に関わる遺伝子について、地域・民族間の違いを調べたところ、感染に違いを及ぼすものではないことが判明したと発表した。
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■地域や民族ごとに疫病率や死亡率が違う新型コロナ
新型コロナウイルス感染症の疫病率や死亡率は地域ごとで差があることが判明している。米国ではアフリカ系やラテン系の感染者がほかの種族や民族と比べて有意に高いことが確認されているという。
この差異を生み出す要因の候補として挙げられるのが、遺伝的な違いだ。新型コロナウイルスは、ウイルス内のスパイクタンパク質がヒト細胞表面のACE2というタンパク質と結合したのち、TMPRSS2などの分解酵素によって切断されることで体内へと侵入する。ウイルスのRNAはTLR3などの抗原受容体(タンパク質)と結合するとウイルスの侵入を検知し、これを排除しようとする自然免疫が働く。これらのタンパク質は、「設計図」である遺伝子が発現することで合成される。
■環境要因の差が新型コロナ疫病率の違いに反映か
北海道大学は米ハーバード大学と共同で、新型コロナウイルスの感染に関わるACE2やTMPRSS2、TLR3など7種類のタンパク質を作る情報をもつ遺伝子の配列に地域や民族間で差があるかどうかを調べた。
ACE2タンパク質のうち新型コロナウイルスとの結合に直接関係のあるアミノ酸は33個存在し、このアミノ酸を作る情報をもつ遺伝子のうち、地域や民族間で変異が生じる配列は19種類存在することが発見された。解析の結果、変異が生じる発生率がもっとも高い遺伝子の配列でも、非フィンランド欧州系で0.59%、東アジア系で0.007%など、地域民族間で差異があることが判明。
だが、この遺伝子配列の変異はACE2タンパク質の機能に影響を与えるものではないという。そのため、新型コロナウイルスとACE2タンパク質の結合は地域や民族間で差がないと研究グループは結論づけた。またほかのタンパク質についても地域や民族間で差がないことも判明した。
研究グループは、米国でアフリカ系やラテン系の感染者の死亡率が高いのは、病歴や年齢、喫煙等の環境要因、ヘルスケア格差が原因ではないかと予想する。
不明な点も残る。今回の研究は、重症例における遺伝的背景の関与を排除していない。そのため、研究グループはさらなる解析が必要だとしている。
研究の詳細は、Infection, Genetics and Evolution誌にて25日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)